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新築住宅における耐震等級とは?耐震等級3と3相当の違いについても解説します

公開日 2022.07.29
更新日 2023.07.13
住宅建築家づくりの流れ

耐震等級とは、どのくらいの地震に耐えられる住宅かを証明する等級のことです。特に住宅情報などで「耐震等級3」など目にしたことのある方も多いのではないでしょうか?
今回の記事では耐震等級3について詳しく解説していきます。

この記事のポイント
  • 耐震等級3の推奨理由
  • 耐震等級の詳細
  • 地震に強い住宅づくりのポイント

目次

1.耐震等級3を推奨する理由を、熊本地震のデータから解説

耐震等級3とは、国土交通省が認めた、耐震等級最上級の住宅のことをいいます。最近では「耐震等級3の家」などのキャッチコピーで推奨する住宅建設会社も増えているようです。 耐震等級3の家は、どの程度の強度があり、なぜ推奨されているのか。2016年に発生した熊本地震のデータを元に解説していきます。

耐震等級3の家は震度7が2回来ても倒れなかった

熊本地震で倒壊した住宅

熊本地震で倒壊した住宅
2000年基準(耐震等級1)で建てた住宅(左)
  耐震等級2の住宅(右)
画像引用元:「2000年基準」も3~4割大被害、筋かい破断など多発

耐震等級3の住宅

熊本地震で震度7を2度耐えた耐震等級3の住宅
画像引用元:株式会社鈴木建設

2016年に起きた熊本地震では、3日間で震度7を2回、震度6(強・弱)を5回記録しました。
日本建設学会が地震後に倒壊した住宅を調査したところ、国が定める耐震基準1(後述)をクリアしている住宅でも、全体の約40%の住宅が損壊したという結果が出ています。損壊はまぬがれたものの、住宅が傾き住み続けることができなくなったり、多額な修復費用が必要になった住宅も多くあります。
そのような中、耐震等級3の住宅は最も強く揺れた地域の16棟のうち14棟が無被害、2棟は一部損壊など軽い被害でした。このような結果を受けて熊本地震以降、大地震でも倒壊しない「耐震等級3」の住宅が推奨されるようになったのです。
では、耐震等級3とはどのような基準なのでしょうか?ここからは耐震等級の内容や、住宅の耐震基準を解説していきます。

2.耐震等級は3段階ある

耐震等級とは、住宅の性能表示制度を定める住宅品質確保促進法(品確法)に沿って制定された、地震に対する建物の強度を示す指標のひとつです。
耐震等級1〜3までの3段階で表され、数字が大きくなるほど強い家となります。

耐震等級
下記の図は横にフリックして全体を見ることができます
等級(低<高) 耐震等級1 耐震等級2 耐震等級3
耐震性能 ・建築基準法レベル
・震度6~7でも倒壊・崩壊しない
・建築基準法レベルの1.25倍
・震度6~7の1.25倍の地震でも倒壊・崩壊しない
・建築基準法レベルの1.5倍
・震度6~7の1.5倍の地震でも倒壊・崩壊しない
大地震時の建物の強度 傾いてでも倒壊・崩壊を避け命を守る 一定の補修程度で住み続けられる 被害を最小限に抑え、生命と財産を守る
建物 一般住宅 学校や病院など避難所となる建物 消防署や警察署など災害の拠点となる建物

旧耐震基準と新耐震基準

「耐震等級」は住宅の性能表示としてランク付けされていますが、「耐震基準」とは建築基準法で決められている耐震強度の基準です。耐震基準は、大地震のたびに見直されており、1981年以前に建てられた建物は「旧耐震基準」、それ以降に建てられた建物は「新耐震基準」と呼ばれる基準で評価されます。木造住宅においては、2000年6月以降にさらに変更が加えられ、「2000年基準」と呼ばれる基準で評価されていることもあります


耐震基準の概要

・旧耐震基準・・・震度5程度の地震で倒壊しない建物
・新耐震基準・・・震度6強から7の地震でほとんど損傷しない建物
・新耐震基準2000年6月以降(2000年基準)・・・新耐震基準より強い家にするために、地盤・金具の位置・耐力壁(※)をバランスよく配置した建物
※耐力壁・・・建物の重さや地震や風の揺れに抵抗し、建物を支える役割の壁

改定された内容として、より強い地震に耐えられる住宅づくりになっていることがわかります。

耐震等級2・3の取得義務はない

法律上、施主の申請がいらない新耐震基準(耐震等級1)を満たしている住宅であれば建築は可能です。耐震等級2や3はあくまで任意の基準なので、施主が希望しない場合は、取得する必要がありません。しかし熊本地震の被害からわかるように、耐震等級3を取得した住宅は倒壊しにくいため、最近では住宅建設会社の基本のプランが耐震等級3になっているものや、施主自らが希望して取得する方が増えてきています。耐震等級3を取得することで、地震に強い住宅を手にできるだけでなく、以下のようなメリットもあります。

3.耐震等級3のメリット

地震保険が最大50%割引になる

住宅購入の際に、火災保険と地震保険を同時に加入する方が多いでしょう。耐震等級が上がることで、保険料に適用される割引率も大きくなります。下記の割引率は、財務省が実施している政策金融で定められている割引率です。
(保険会社によっては、適応していない場合があります。詳細は各保険会社にお問い合わせください。)

  • 耐震等級1では10%割引
  • 耐震等級2では30%割引
  • 耐震等級3では50%割引

例として5年タイプの地震保険を一括払い(¥85,500)したケースで保険料を比較してみましょう。

モデルケース

  • 場所:東京都
  • 水害リスク:水災リスク料率B
  • 構造:T構造
  • 建物:新築木造一戸建て120㎡
  • 建物保険金額:2,500万円
耐震等級1 耐震等級3
¥85,500の10%割り引き
¥76,950
¥85,500の50%割り引き
¥42,750

耐震等級3と耐震等級1では、5年間で¥34,200の保険料の差が出ます
※こちらはあくまでも試算ですので、住む地域や保険会社によって大幅に金額が変わることもあります。

「フラット35」の金利引き下げプランが利用できる

住宅ローンの支払いに利用できる長期固定金利の「フラット35」。その中で最もお得なプラン「フラット35Sの金利Aプラン」が利用できます。通常のフラット35が年1.5%の金利なのに対し、フラット35Sの金利Aプランでは、借り入れからの10年間は1.25%の金利引き下げを受けることができます。(2022年5月現在)
通常のフラット35と支払金額を比較してみましょう。

【試算例】借入額3,000万円(融資率9割以下)、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし、借入金利年1.50%の場合

フラット35

取扱金融機関または住宅金融支援機構の審査の結果によっては、お客さまのご希望にそえない場合がありますので、あらかじめご了承ください。
試算結果の数値は概算です。
(注)上記総返済額には、融資手数料、物件検査手数料、火災保険料などは含まれず、お客さま負担となります(借入額に含めることができる場合があります。)。

【フラット35】S(金利Aプラン)なら【フラット35】より総返済額が約73万円お得です!
引用元:【フラット35】S

4.耐震等級3の注意点

耐震等級3の注意点

ここまでの内容で、耐震等級3の耐久性やメリットがおわかりいただけたかと思います。最近の建築プランには、耐震等級3がベースとなり追加料金無しで取得できる住宅も増えてきているようです。
しかし、耐震等級3といってもすべてが安全とは言い切れません。ここからは注意すべき点を見ていきましょう。

1)耐震等級3と耐震等級3相当は大きく異なる

耐震等級3に「相当」と付いている住宅は、正式な認定を受けていない住宅ということです。耐震等級3を取得するには、10万円〜20万円の費用をかけて国が認定する第三者機関が正式な審査を行い、認定を受ける必要があります。その審査を行わない場合は、実際に同等の施工内容で耐震強度があっても、耐震等級3とは記載できないため、耐震等級3「相当」となるのです。

2)耐震等級の審査方法を確認する

耐震等級2と3は、住宅性能評価機関という専門機関で審査され、住宅性能評価書が発行されます。
審査時に用いられる計算は、

  • 限界耐力計算・・・耐力壁や準耐力壁の量が必要量確保されていいるかの調査
  • 許容応力度計算・・・柱や壁のような部材の量や配置バランスが災害時の揺れや風圧に対してどの程度耐えられるか(=許容応力)の調査

こちらの2種類となります。
いうまでもなく、構造計算による耐震等級3の設計である「許容応力度計算」が、実際の安全面の観点から推奨されています。
住宅建設会社と耐震等級3の話をする際には、審査方法についても質問し、どちらの計算方法を採用しているか確認することをおすすめします


豆知識 〜住宅性能評価書とは〜

住宅性能表示制度とは平成12年4月1日に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(以下「品確法」という。)」に基づく制度です。
建てた住宅の性能が分かりやすく書かれている、いわば住宅の通知表のようなものです。
取得申請をすると、国が認めた第三者評価機関によって調査を行い、住宅の性能を数字で評価します。
取得は施主の任意によるもので必須ではありませんが、住宅性能評価書を取得するメリットは2つあります。
1.万一住宅建設におけるトラブルが発生し、当事者同士では解決が出来ない場合、※指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)に紛争処理を申請することが可能になります。
2.地震保険の割引が適用されます。
住宅建設におけるトラブルについて、詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
実際におきた注文住宅のトラブル事例|未然に防ぐ方法も紹介します

申請にかかる費用は10万円~20万円程度です。

着工してからでは評価が受けられないので、住宅の見積もりや相談の段階で依頼しましょう

※指定住宅紛争処理機関(各地の弁護士会)
指定住宅紛争処理機関は、裁判によらず住宅の紛争を円滑・迅速に処理するための機関です。 建設住宅性能評価書が交付された住宅の紛争であれば、評価書の内容だけでなく、請負契約・売買契約に関する当事者間の全ての紛争の処理を扱います。 紛争処理の手数料は1件あたり1万円です。
引用元:一班社団法人 住宅性能評価・表示協会

3)耐震等級3の相場費用は40万円~50万円

耐震等級3が標準仕様になっている住宅プランは、申請費用や工事費用が含まれているため費用は発生しません。しかし通常の住宅を耐震等級3にするには追加費用が必要です。
申請費用の相場は、性能表示計算で約10万円、許容応力度計算では約20万円以上といわれています。さらに既存の住宅より耐震性に優れた構造や部材を使用するので、申請費用と建設費用を合わせると総額40万円~50万円程度の料金になると考えておくとよいでしょう

5.地震に強い住宅づくりとは

最後に、地震に強い住宅を建てるための注意点をご紹介します。土地選びや住宅建設会社を選ぶ際の判断基準にお役立てください。

1)強い地盤の土地を選ぶ

強い地盤の土地を選ぶ

いくら耐震性のある建物でも弱い地盤に建ててしまうと、倒壊は防げますが住宅が傾いてしまい、住み続けられません。そのようなことが起こらないよう、強い地盤のエリアを選ぶことを心掛けたり、地盤改良についても学んでおきましょう。

地盤調査や地盤改良を知りたい方は、こちらをご覧ください。
【地盤調査】どんな事をするの?何が分かるの?地盤調査の疑問を解決します
【地盤改良とは】地盤改良前に知るべき!その注意点と体験談

2)結露やシロアリの被害が起こりにくい住宅づくり

新築時に耐震等級3を取得した住宅でも、数十年かけて木材が腐食したり、シロアリの被害を受けてしまうと地震の際に倒壊してしまうことがあります。その原因はカビの発生の元ともなる結露です。特に木造住宅では「木材腐朽菌」という木材を腐らせる菌が住宅内の結露によって増殖し、柱や梁を腐らせます。さらにシロアリは湿気のある環境を好むので、床下などが被害に遭い、いくら耐震性能を重視していても倒壊しやすい住宅になってしまうのです。
住宅を建てる際には、結露しにくい工法や空調設備を採用し、定期的な住宅点検などの対策を行なって、何年経っても耐震性能が下がらない地震に強い住宅を作りましょう。

住宅のカビや結露について知りたい方は、こちらをご覧ください。
【後悔しない!新築の空調】全館空調とカビの関係性について
シロアリ被害について知りたい方は、こちらをご覧ください。
【監修記事】基礎断熱のシロアリ対策は「基礎工事」と「シロアリの生態」を理解して万全に!

3)実大振動実験を実施している住宅建設会社を選ぶ

実大振動実験

画像引用元:タマホーム

本物の住宅を建てて地震の振動を再現し、住宅がどのくらいまでの揺れに耐えられるかの実証振動実験を行っている住宅建設会社も多くあります。このような実験をすることでより地震に強い家づくりができます。同じ工法でご自身の住宅を建築するので、イメージしやすく信頼性もあり、住宅建設会社選びの決め手としてもよいでしょう。

4)実績が証明された耐震技術を持っている住宅建設会社を検討する

最近では日本中で大地震が起こる可能性が高まっていることもあり、耐震等級3に加え、独自で開発した工法・部材を使った地震に強い住宅を販売する住宅建設会社も増えています。
ここで注意しておきたい点は、信頼できる実績があるかということです。独自開発とは裏を返せば自社で作った基準をクリアすればよいとも言えます。専門家がチェックしている・耐震実験を複数回クリアしているなど明確な実績を見て採用を決めましょう。

まとめ

耐震等級3の内容をまとめるとこのようになります。

  • 震度7の地震を受けても住み続けられている実例がある
  • 現在の等級で最も高いのが耐震等級3
  • 「耐震等級3」と「耐震等級3相当」は大きく異なる
  • 保険料や住宅ローンが割り引きになる

耐震等級3と耐震等級3相当の大きな違いは、正式な認定を受けているかということです。耐震等級3「相当」では、地震保険の割引や住宅ローンの金利優遇なども受けられないので注意しましょう。
耐震については各メーカーごとに考え方があり、地域や環境によっても耐震効果が異なります。耐震等級3を取得するかも踏まえて、ご自身の考えに合った住宅づくりをしてみてください。

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