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【監修記事】断熱材の重要性&特性比較。断熱材から見る住宅建設会社選びとは?

公開日 2023.05.18
更新日 2023.06.16
住宅建築高気密高断熱

2025年以降に建てられる住宅においては「省エネルギー基準適合義務化」が決定しています。

省エネルギー基準適合義務化

国土交通省 2022年4月22日の報道発表資料

住まいの主な省エネ対策"

画像引用元:環境省「Cool choice」HPより

2025年に定められた省エネルギーの基準は、2030年以降段階的に引き上げられることも決定しています。

省エネルギー基準適合のためには住宅の断熱化が不可欠ですが、現在、日本の建築において、この省エネルギー基準適合に伴う断熱材や断熱工法の指定はありません。 つまり、住宅建築会社が使用する断熱材の種類や断熱工法は、個々の取り組みに依存しているのが現状です。

この記事では、これから住宅を建てる方に断熱について正しい理解をしていただくために、高断熱住宅の重要性や断熱材の性能比較、住宅建築会社の高断熱住宅への取り組みについてご紹介します。

この記事のポイント
  • 高断熱でうまれるメリットを知る
  • 断熱材ごとの特性を知る
  • 断熱性能を踏まえた住宅建設会社の選び方

監修者:三田村 輝章(前橋工科大学 准教授)

目次

1.家族の健康を守るだけじゃない!財布にもやさしい高断熱住宅

高断熱住宅とは、外壁などからの熱の伝わりを少なくすることで、外気の影響を大きく受けずに室内の温度を快適に保つことができる住宅です。熱の出入りが少ない家は、冷暖房効率が上がるので少ないエネルギーで部屋の温度を保つことができ、CO2排出を最小限に抑え地球環境に優しい家といえます。

制度として義務化される高断熱住宅ですが、地球環境だけでなくそこで暮らす人の健康や生活においても必要なことだということを忘れてはいけません。

1)結露を防ぎ、住宅寿命も人の健康も維持

高断熱住宅

断熱性能の低い家では窓や壁の表面温度が低下し、結露(けつろ)が発生することで、カビが発生しやすくなります。カビは住宅の劣化や人体の疾病の原因になります。断熱性能を高めることで窓や壁の表面温度が上昇し、結露を防ぐことができカビの発生を抑えられます。

疾病の原因

画像引用元:環境省「Cool choice」HPより

2)ヒートショックや熱中症から命を守る

命を守る

住宅内に寒暖差がある場合、部屋の移動時の急激な温度差で体に負荷をかけてしまうことを「ヒートショック」といい、場合によっては心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす危険性があります。断熱性能を上げることで、外気の影響を受けずに住宅内を一定の温度に保ち、ヒートショックが起こりにくい環境にします。
また、寒い季節だけでなく真夏でも冷房の効きがよくなることで、室内での「熱中症」になるリスクが軽減され、家族の命を守ることにつながるのです。

3)電気代の節約になる

電気代の節約

断熱性能が上がることで冷暖房効率が上がり、少ないエネルギーで一年中快適に暮らすことができます。冷暖房費を最小に抑えることができれば、電気代の節約になります。

地球環境も人の暮らしも守る断熱性能の高い家づくりは、これから住宅を建てる人にとって必要不可欠であることがわかります。

2.断熱材を選ぶ基準とは?

断熱材の良し悪しを判断するには大きく2つのポイントに注目します。
その断熱材の素材の「種類」、そして、性能を判断する「数値」です。
種類は下記の4つがあり、それぞれ特性が異なります。

  1. 「無機繊維系」
  2. 「木質繊維系」
  3. 「発泡プラスチック系」
  4. 「天然素材系」

数値は「熱がどれぐらい伝わるか」を表す「熱伝導率」を用います。数値が小さければ小さいほど熱が伝わりにくく、住宅の温度を保つことができる良い素材という判断になります。もちろん断熱材自体の厚みも大切で、厚みが大きいほど熱の伝わりが少なくなるので、考慮しながら考えます。

同じ断熱材でも製品によって熱伝導率が異なります。下記の表にまとめましたので見ていきましょう。

断熱材の熱伝導率区分

下記の図は横にフリックして全体を見ることができます
断熱材(工法) 密度
[kg/㎥]
熱伝導率
[W/(m・K)]
無繊維系 グラスウール 16/20/24 0.045/0.042/0.038
高性能グラスウール 16/24/32 0.038/0.036/0.035
吹付けロックウール 200 0.064
ロックウール(マット) 40 0.038
ロックウール(フェルト) 40 0.038
ロックウール(ボード) 80 0.036
木質繊維系 セルロースファイバー 25/45/55 0.04※
インシュレーションボード 300 0.06
発泡プラスチック系 押出法ポリスチレンフォーム 25/28/31 0.040/0.034/0.028
A種ポリスチレンフォーム 10/20 0.042/0.038
ビーズ法ポリスチレンフォーム 15/20/25 0.043/0.040/0.037
硬質ウレタンフォーム 25/35 0.024/0.023
吹付け硬質ウレタンフォーム 15/35 0.040/0.034
フェノールフォーム 25/45 0.022※
天然素材 羊毛断熱材 15/17/27 0.049/0.045/0.038
炭化コルク 110/120【kg/㎡】 0.04

※密度が異なっても熱伝導率の数値は同じ
引用元:最新建築環境工学[改訂4版]、井上書院

次に断熱材の種類について詳しく見ていきましょう。

3.主な11種類の断熱材とその特性

断熱材別特性一覧

下記の図は横にフリックして全体を見ることができます
断熱材
(工法)
耐火性
耐熱性
調湿性 耐水性
撥水性
防虫性
(シロアリ)
防音性 耐久性 工法
無機繊維系 グラスウール
防湿シート必須
充填
ロックウール
防湿シート必須
充填
木質繊維系 セルロースファイバー
加工必須

加工必須
充填
インシュレーションボード
加工必須
充填
発泡プラスチック系 ポリエチレンフォーム 充填
ビーズ法ポリスチレンフォーム 外張り
押出法ポリスチレンフォーム 外張り
硬質ウレタンフォーム 充填
フェノールフォーム 充填
天然素材系 羊毛断熱材 充填

無機繊維系

最も普及している断熱素材。ガラス繊維や鉱物を原料とした、細かな繊維状が絡み合うことで空気層を作り出し、断熱効果を発揮します。高い耐火性と湿気を含むことのない(湿気で重さが増すことがない)素材で、天井や壁の断熱に使用されることが多い。

グラスウール

ロックウール

木質繊維系

木片やパルプを使用した断熱素材。多孔質のため吸音効果も高く、吸放湿性、保湿性が高いため結露の軽減に期待ができます。エコ素材の一種。

セルロースファイバー

インシュレーションボード

発泡プラスチック系

プラスチック素材に細かな気泡を閉じ込めた断熱素材。軽量で安価、さらに施工性も高く重宝されている素材だが、熱に弱く、中には燃えた際の有毒ガスの発生が危惧されるものも。壁や床の断熱に使用されることが多く、現在は燃えにくく有毒ガスの発生を抑えた素材などの開発が進んでいる。

押し出し法ポリスチレンフォーム
画像引用元:カネカ

インシュレーションボードビーズ法ポリスチレンフォーム
画像引用元:高本コーポレーション

天然素材系

軽量で優れた調湿機能をもつ断熱素材。輸入素材が多く、健康住宅を謳う一部の住宅建設会社でしか使用されておらず、価格設定が高め。

羊毛断熱材
画像引用元:アイティエヌジャパン

家づくりの豆知識 〜3つの断熱工法〜

断熱材の工法には3つあり、断熱性能は断熱材の違いだけでなく、その工法の違いによっても差が出ます。

①外張り断熱:家全体を断熱材で包み込む工法。
気密性が高く、結露を起こしにくい。しかし、外壁は厚くなり、狭小住宅や複雑なデザインの住宅には不向き。さらに、断熱材の上から外装材を留めるため耐震性に少し不安がある。

②充填断熱:柱などの構造材の間に断熱材を充填する工法。
一般的な木造住宅で用いられる工法で、様々な種類の断熱材を使用でき、低コストである。

③付加断熱(ダブル断熱):①と②を合わせた工法。
非常に高い気密性と断熱性を実現できるため、寒冷地域やZEHなどの高性能住宅で注目されている。しかし、外張り断熱と充填断熱の2つの処理を行うため、その分工期と費用がかかる。

4.使用する断熱材は住宅建設会社によってさまざま

冒頭で述べたように、省エネルギー基準適合義務化において、高断熱住宅における断熱材や工法の指定はありません。住宅建設会社は、自社の工法や仕入れなどのさまざまな事情に相応しい断熱材を選び施工しています。ハウスメーカーや工務店には、断熱に対してどんな素材を使ってどのように取り組んでいるか、しっかりヒアリングしていくことをおすすめします。

1)住宅建設会社に確認するべきこと

住宅建設会社を決める前に、事前に下記の内容を確認しておくと安心です。

  • 使用する断熱材とその理由(メリット・デメリット)
  • 保証体制

特に、保証体制についての確認は必須です。どれほど性能の高い素材を使った住宅でも、施工が不十分であれば効果は半減します。とはいえ、建てる前に判断するのは難しいものです。保証が手厚いということはそれだけ自信と実績があるということの表れでもあり、万が一の時にも安心できます。

2)使い方もさまざま!住宅建設会社選びの基準の一つに

住宅建設会社によって「断熱材は決まっている」といっても、1種類のみに絞っているとは限りません。住宅構造に合わせた断熱材を選び、その使い方にも工夫を施し提案している住宅建設会社が多くあります。ここでは、主な3つのケースをご紹介します。

①複数の断熱材を組み合わせて使用するケース

一つの断熱材だけでなく、複数の断熱材を組み合わせる独自の技術をもつ住宅建設会社もあります。そうすることで、断熱材の持つデメリットを補い合い、より断熱性能を高めることもできます。

参考例

天井断熱

高い断熱性能をもつアイフォームGと、複雑で小さな隙間もしっかり埋めることのできるウレタンフォーム吹付発泡を併用することで、断熱・気密性能を高め見えない結露を防ぎます。家を長持ちさせると同時に、夏涼しく冬暖かい室内環境を実現します。

引用元:高気密・高断熱|【公式】富山・石川のデザイン注文住宅|SHOEIの家

②施工箇所によって断熱材を変えているケース

壁・天井・床など、施工する箇所によって断熱材を変えている住宅建築会社もあります。それぞれの場所に適した断熱材を使用し、住宅の形状に合わせて施工することで、住宅性能をさらに高めることができます。

参考例

断熱

引用元:構造|広島県で注文住宅・分譲住宅・土地のことなら創建ホーム

③プランごとに断熱材や工法を分けているケース

いくつかのプランを用意し、そのプランごとに使用する断熱材や工法を変えている住宅建設会社もあります。一つの住宅建設会社の中で、費用や性能のバランスを見ながら選択できるというメリットがあります。

参考例

引用元:商品・プラン|和泉市で平家やzehを建てるならアーキホームライフ

国の補助制度を使って、お得に建てよう

断熱性能の重要性や住宅建設会社選びについてご紹介しましたが、高い断熱性能・省エネ性能をもつ住宅には補助制度もあります。補助制度について詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。

家づくりの豆知識 〜ZEH事業の補助制度〜

住宅の省エネ・省CO2化に向けて、経済産業省・国土交通省・環境省の3省連携の取り組みZEH事業。ZEH基準を満たす住宅には補助制度(最大100万円)もあり、その基準の一つに「断熱性能の高さ」があります。

ここでの断熱性の高さは、「外皮平均熱貫流率(UA値)」で判断され、この数値が低いほど性能が高く、ZEH対象の基準数値は0.6以下です。ZEH基準を満たし、補助制度を受けることができる住宅建設会社はZEHビルダーと呼ばれ、下記サイトより確認できます。

ZEHビルダー/プランナー(フェーズ2)一覧検索

まとめ

住宅建設会社ごとに取り扱う断熱材は異なります。そのため、注文住宅であっても断熱材を自由に選べるとは限りません。しかし、「どのような断熱材を使用しているのか」その工法はもちろん、住宅全体の性能と合わせ、住宅建設会社を選ぶ基準の一つとなるでしょう。寒暖差の大きな地域、湿度が高い地域など居住環境によってもその選択肢は異なります。ここでご紹介した内容を踏まえ、快適な家づくりにぜひお役立てください。
さらに、基礎部分に施す断熱「基礎断熱」「床断熱」について詳しく知りたい方は、こちらもどうぞ。

『基礎断熱』『床断熱』の違いとは?メリット・デメリット、冷暖房設備との相性についても徹底解説

この記事の監修者
三田村 輝章

三田村 輝章

前橋工科大学 准教授

1973年福井県生まれ(愛知県出身)
東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了,博士(工学)。
専門は建築環境工学。建材の調湿性能,シックハウス,温熱環境など,主に 住宅の熱・湿気・空気環境の研究に取り組んでいる。

著書に『ぜんそくとアトピーが治る家』(共著),『版築-伝統と革新の間』 (共著)など。
空気調和・衛生工学会学会賞(2005年),日本建築学会教育賞(教育貢献) (2021年)などを受賞。

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