住まいの購入にあたって、比較検討されるようになった、全館空調。環境への配慮、快適な暮らしの実現のために多くの人たちが全館空調を検討しています。
今回は「冷暖方式」の観点から、全館空調を深堀りしていきます。
目次
この記事のポイント
- 全館空調のメリットデメリットや個別空調の特徴が分かる
- 高気密・高断熱住宅を詳しく説明
- 全館空調をタイプ別に分かりやすい表にして解説
全館空調と個別空調
全館空調とは?
最大のメリットは、家全体の温度を均一にすることができるということ。
通常は、1台(2台1セットの場合もある)の室外機で、家全体の空調を一括管理するもので、空調は「ダクト方式(※)」で行っているものです。
各住宅メーカーが取り入れており、住まいの購入時に導入することが増えている設備です。24時間365日体制で、住まい全体を快適な室温・湿度に調整できる点が魅力です。
※ダクト方式:冷風・温風をダクトを通じて各室に送風する方式のこと。
メリット
- 家の中は、一年中均一温度に保つことができる!
- エアコンのような露出がなく、室内をスッキリさせることができ、間取りもつくりやすい!
- 温度だけでなく、清浄な空気環境を保つことができる!
デメリット
- 導入費用が高い…。
- 電気代が高い…。
- 乾燥しやすい…。
- メンテナンスが面倒…。
- 故障時は、家中の冷暖房機能が止まる…。
全館空調のメリット・デメリットを詳しく知りたい方は、以下も参考にしてみてください。
関連記事:全館空調のメリット・デメリットと、全館空調について知っておくべき4つのポイント
個別空調とは?
最大のメリットは、各部屋は好きな温度に調整することができるということ。
部屋毎やフロア毎に空調のオン・オフすることや冷暖房の切り替え、温度調節が可能なものです。建物内部にダクトを張り巡らせる必要がないということから、ダクトレス式空調とも呼ばれています。

高気密・高断熱住宅
国土交通省は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」で、住宅の省エネ性能向上を推進しています。こうした国の動きも受けて、高気密・高断熱の住宅は広く知られるようになりました。
補助金が適用されるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)(※1)の要素にもなるため、住宅購入を検討する方たちの興味関心が高まっているのです。
高気密・高断熱の住宅というのは、精度の高い建築部材や防湿シート、気密テープなどを使用し、可能な限り隙間を生まないよう建てられ(=高気密)、外壁と内壁の間に断熱材を使用することや、断熱性の高い窓を取り入れるなどして断熱性能を高めた(=高断熱)住宅のこと。

光熱費を抑えるから、省エネ。地球環境にやさしい◎
エアコンによる冷暖房は、一般的に日本では住まいの多くに導入されていますが、断熱性や気密性が高くない住宅は、外気の影響を大きく受け、温まりにくく冷えにくいといった状況が起こります。そのためエアコンをフル稼働しても暖まらず、ホットカーペットや電気ストーブなどの補助暖房器具が必要になることがあります。
高断熱・高気密住宅は、季節によって温度の変わる外気の侵入や熱を遮断してくれるので、室温を維持して建物そのものを快適に保ってくれます。そうすることで、エアコンや補助暖房器具の使用は少なくすることができ、光熱費の節約になります。また、家の蓄熱性能などで自然エネルギーを上手に活用できるので、家の中の室温を快適に保ちながら過ごすことができ、省エネで、地球環境にやさしい住宅での生活を送ることができるのです。
ヒートショックを防ぐ。健康改善にも。
冬は家全体を温かく保ってくれるのが、高気密・高断熱の住宅。
反対に、高気密・高断熱ではない住宅では、暖房の効いた暖かい居間と暖房が効いていない寒い廊下や浴室、トイレなどとの温度変化が大きくなります。部屋を移動することで感じる急激な温度変化によって血圧が大きく変動することになり、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす「ヒートショック(※2)」という現象の危険性が高まります。これは、住環境のリスク軽減として考えておきたいポイントです。

また、日本建築学会で2010年に発表された「住環境が居住者の健康維持増進に与える影響に関する研究」のWeb調査によると、断熱性が高い住宅に住む人ほどさまざまな疾病にかかりにくくなり、夏の睡眠不足を解消したり、冬の風邪などの発症率低下につながるということがわかっています。
ヒートショックの予防となるだけでなく、住む人たちの健康を考慮するうえで、高断熱・高気密住宅には大きなメリットがあります。
※1 ZEH(ゼッチ):
Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略。住まいの断熱性・省エネ性能を上げること、そして太陽光発電などでエネルギーを創ることにより、年間の一次消費エネルギー量(空調・給湯・照明・換気)の収支をプラスマイナス「ゼロ」にする住宅を指します。
※2 ヒートショック:
家の中の急激な温度変化で血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳梗塞、失神などを引き起こして身体へ悪影響を及ぼす現象。
全館空調には、4つの冷暖方式!
全館空調の冷暖方式は、大きく4つのタイプがあります。それぞれの特性を理解して、導入時に検討したいところです。
天井吹き出し型
天井内にダクトを設置。天井の吹き出し口から冷暖気を送るタイプのものです。

引用元:Z空調
例)Z空調の場合(HPより一部抜粋、まとめ)
快適な温度・湿度に調整した空気を建物内に送る
外気温の影響を受けにくい高気密・高断熱な住宅性能に加え、24時間給排気に機械動力を使用する『第1種換気』と、熱交換ユニットを通った空気を建物内に取り入れる『全熱交換式』を採用。
健康面にもよい効果が期待できる
高性能フィルターで、屋外からホコリや花粉の舞い込み、虫の侵入を防ぎ、新鮮でクリーンな空気を採り入れて心地よく過ごすことができます。健康的な温度に空気環境をコントロールしながら花粉症などのアレルギーの予防など、健康面で嬉しい効果も期待できる。
床下冷暖房型
床下の基礎部分を断熱して、冷暖気を蓄熱します。床からの輻射熱とガラリによる送風で、家全体を冷暖するタイプのものです。

例)オンレイ「ECO床暖」の場合
ほぼ無風の快適な住空間
床からの輻射熱で、夏はひんやりと、冬は頭寒足熱で良い睡眠をとることができ健康にもよい。
足元から冷暖されることで冷暖房効率が抜群に良い
人が直接触れる床が冷暖されることで、冷暖房を体感しやすく、低い設定温度でも十分に快適になる。
冬場は設定温度が低くて済むので過度な乾燥がない!
設定温度が低くて済むため、過度な湿度を奪う必要がないため湿度が下がりにくい。
※送風式暖房の場合、設定温度を高くすると室内の湿度が奪われやすくなります。
導入費用が経済的!
お家をまるごと冷暖するので、廊下、浴室やトイレなどに補助冷暖房器具は必要ありません。
個室用エアコン+リビング用エアコン+床暖房や補助空調機器をプラスした冷暖房設備の導入と比較して、約30%の導入費用カットを実現します。
壁パネルからの輻射型
輻射冷暖房は、物質を介さずに高い温度から低い温度に熱が移動するという性質を利用する方法です。壁に大型冷暖房パネルを設置して、パネルからの輻射熱で家全体を冷暖します。

引用元:F-CON
例)F-CON(エフコン)の場合(HPより一部抜粋、まとめ)
冷暖パネル
独自研究を重ねた高性能冷暖パネルで、遠赤外線による輻射・放射を行い、室外機により冷やした/温めた循環水を流すことで、冷房/暖房を行っています。
リモコン
リモコンで温度設定が可能。タイマー運転によるON/OFFの切り替えが可能な為、毎日の操作は不要です。
壁・天井の内装仕上げ材
F-CONシステム専用の内装材(漆喰・珪藻土・水性塗料・壁紙など)を開発。冷暖パネルと同じようにセラミック成分を含ませており、冷暖パネルからだけではなく、壁天井の内装仕上げ材からの輻射・放射も影響を受けやすくすることで、より室内での温度差を小さくし、快適な環境へとつなげます。
壁掛けエアコン型
全館空調システムは、最新の設備で先進的なイメージを抱く方もいるかもしれません。
一方で、馴染みのある壁掛けエアコンも、各エアコンメーカーは、例年新たなモデルを発売し、性能を進化させてきました。
壁掛けエアコン型のものは、1台の能力を使用し、各部屋の間仕切りに採風場所を設けて家全体を冷暖するものです。

引用元:ブラボーゼネクト
例)ブラボーゼネクトの場合(HP一部抜粋、まとめ)
部屋間の温度差がない
建物全体を高断熱材で包み込んだ空間を生み出します。夏も冬も外気温に左右されにくい室内環境を実現します。
高効率エアコン
センサーがムダを見つけて自動で節約するなど、電力の消費を抑制する省エネ型のエアコンを採用。
健康で快適な空間をキープ
全熱交換換気システムで、住まいの各箇所に設置された吹き出しグリルを通す給気と、廊下や洗面所での集中排気で24時間常時換気が可能。湿気の侵入や過乾燥を緩和します。
空気を循環させる仕組み
ランマ付き居室ドアにすることで、扉を閉めたままでも家中の空気が循環できるようになっています。
まとめ
天井吹き出し型![]() |
床下冷暖房型![]() |
壁パネルからの輻射型![]() |
壁掛けエアコン型![]() |
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販売方式 | ハウスメーカー系列(※3)/ビルダーフリー(※4) | ビルダーフリー | ビルダーフリー | ハウスメーカー系列/ビルダーフリー |
タイプ | 天井内にダクトを設置し、 天井からの吹き出し口から冷暖気を送ります。 |
床下の基礎部分を断熱し冷暖気を蓄熱し、 床からの輻射熱とガラリによる送風で 家全体を冷暖します。 |
壁に大型冷暖房パネルを設置し、 パネルからの輻射熱で家全体を冷暖します。 |
1台の壁掛けエアコンの能力を使い、 各部屋の間仕切りに採風場所を設けて 家全体を冷暖します。 |
デザイン | 〇 室内機の露出がなくインテリアの美観をキープ! 吹き出し口の真下は風が当たりやすい。 |
◎ 床材の種類は自由に選べる! 1階天井は吹き出し口を設けなくてよいため 自由設計できる! |
〇 パネル設置をするため、設置場所の検討が必要。 |
〇 室内機がインテリアの邪魔になってしまうことも。 また、室外機も多くなる。 |
機能性 | ◎ 例)三井ホーム「スマートブリーズ」の場合 冷房・暖房・除湿・加湿・換気・空気清浄・脱臭 |
◎ 例)オンレイECO床暖の場合 冷房・暖房・換気・除菌・脱臭・消臭 |
△ 例)F-CON「光冷暖」の場合 冷房・暖房 |
△ 例)YUCACOシステム研究会「YUCACOシステム」の場合 冷房・暖房 |
導入費用/メンテナンス | 〇 価格:130~300万円(メ―カーによる差がある) 例)三井ホーム「スマートブリーズ」の場合 「スマートブリーズ・ワン」の場合、 1ヶ月に1度のフィルター清掃と2年に 1回のフィルター交換でOK! ※製品によっては業者による 有料メンテナンスが定期的に必要な場合も。 |
◎ 価格:130万円以下 フィルター月1~2回、掃除機の掃除でOK! ※4年に一度程度のクリーニングをすると より快適を保てる! |
〇 価格:250万円~ 風が直接当たらない! 蓄熱により効果が持続するため、 涼しさや暖かさが維持されて、省エネ! 8~10年に一度、部品交換。 |
◎ 価格:130万円以下 導入コストが安い! 部屋毎に温度調節ができる! |
気になるポイント | 〇 天井の高さによって、足元まで冷暖房が届かないことも。 |
◎ イオンクラスターで除菌・脱臭・消臭機能もあり、 ウイルス知らず!独自技術により 小型化・軽量化・低コストを実現。(国際特許取得) |
◎ 無風・無音! 遠赤外線の「輻射・放射」を最大限に活用。 起動させてから効果が出るまでに少々時間がかかる。 |
◎ ゼロエネルギー住宅対応!(※5) 省エネ住宅の電力にでき、 電力会社から電気を購入しなくてよくなる場合も。 |
メーカー例 | ■ハウスメーカー系列 三井ホーム「スマートブリーズ」 三菱地所ホーム「エアロテック」 住友林業「エアドリーム ハイブリッド」 積水ハウス「エアシーズン」 セキスイハイム「快適エアリー」 ミサワホーム「エアテリア」 パナソニックホームズ「カサートプレミアム」 トヨタホーム「スマート・エアーズ」 ■ビルダーブリー 三菱エアリゾート デンソー「パラディア」 アズビル「きくばり」 Z空調 オーエムソーラー |
オンレイECO床暖システム | F-CON「光冷暖」 | ■ハウスメーカー系列 アイダ設計「ブラボーゼネクト」 ■ビルダーフリー YUCACOシステム研究会「YUCACOシステム」 |
※3 ハウスメーカー系列:ハウスメーカー系の全館空調メーカーは、別のハウスメーカーで建設する場合は導入することが出来ません。
※4 ビルダーフリー:加盟店制度をとっている全館空調メーカーです。
家電製品を単体で販売している売り切り制のメーカーとは異なり、全館空調設備は家全体に関わる設備のため、安全面やメンテナンスの観点から、販売代理店として加盟している工務店でのみ販売しています。
※5 ゼロエネルギー住宅:消費エネルギーと創るエネルギーがゼロになることを目指した住宅のことで、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)といいます。
関連記事:全館空調のメリット・デメリットと、全館空調について知っておくべき4つのポイント
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)とは?
住まいを検討する際には、少しでも自分や家族のライフスタイルに合う快適な空間づくりを目指すと思います。 住環境をよくするには、空調設備は大切です。全館空調とひと口に言っても、冷暖方式は大きく4つあります。どのような日常を過ごされるのか、具体的にイメージをしながら、自分たちに合う、経済的にも地球環境にも最適な空調設備を取り入れるよう検討してみてください。
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