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全館空調の電気代は高い?高いと思われる理由を検証

公開日 2020.05.15
更新日 2023.07.12
健康的な住まい全館空調

新しく家を建てる方にとって、居住空間全てが常に均一温度に保てる全館空調は非常に魅力のある空調システムです。
ただし、その電気代が高いという口コミもあり、不安に思い諦めてしまう方もいらっしゃいます。
ここでは、「全館空調の電気代が高い?」と思われる理由を挙げて検証、解説していきたいと思います。

この記事のポイント
  • 全館空調が高いと言われる理由を紹介
  • 全館空調と一派的な冷暖房設備の電気代やコスパを比較検証しました
  • 電気代の負担が少なく、快適に暮らすにはどのようなことが必要なのか分かる

目次

全館空調の電気代が高いと思われる理由

全館空調の電気代が高いと思われる理由は主に以下が挙げられます。

  • 一日中24時間稼働するから
  • 一年を通して365日稼働するから
  • 居住空間の全てに空調が行きわたるため対象面積が多いから
  • ネット上では月の暖房代が4万を超えたという書き込みも

「全館空調だと稼働時間が長く対象面積も広いので電気代が高くなる」
「全館空調で月の暖房代が4万を超える」
こういった解釈は、正解でもあり不正解でもあります。
全館空調は、正しく使うかどうかで電気代に大きな差が生じてくるシステムなのです。

全館空調の仕組み

その前に、全館空調の仕組みについて説明します。全館空調とは、エアコンのように居室毎に室内機を設置するのではなく、1台の専用室内機をセントラル化させ、その冷暖気をダクトと吹き出し口を使って居住空間全体に行きわたらせます。全館空調のメーカーは多数あり、その詳細の仕組みはそれぞれですが、大枠の仕組みはどこも同じです。
※住宅の広さによっては全館空調の室内機が複数台必要になる場合もあります。

個別エアコンと全館空調の室内機・室外機の配置イメージ

個別エアコンと全館空調の室内機・室外機の配置イメージ

全館空調は一日中24時間稼働するから電気代が高い?を検証

このような考え方をお持ちの方がいると思います。

  • 平日は朝から夜まで10時間も不在するので、その不在時に稼働するのは勿体ない
  • 寝室には就寝のときしか居ないのでその時間だけ稼働すればいい

電気のスイッチのように使う時だけオンにする、という使い方は、一見意識が高い行動に見えますが、実はエアコンではスイッチの入り切りは却って電気負荷が高くなることをご存知でしょうか。
エアコンは室内温度を設定温度まで上げる立ち上がり時がいちばん電気を使います。
一旦設定温度まで到達すれば所謂アイドリング状態となり、電気をあまり使いません。

エアコンの仕様表を見ると、消費電力についてこのように書かれています。
例えば8畳用エアコンの製品には
 暖房時消費電力 135~1,450
 冷房時消費電力 165~1,000
このように幅をもった表示がされています。
ここの高い数値が立ち上がり時に使う電力量です。低い数値は設定温度に到達した後の安定時です。この製品の場合、立ち上がり時は安定時の夏場は6倍、冬場は10倍もの電力量がかかると言われています。

例えば、8時間の不在時にエアコンをオフにした場合、16時間が稼働時間ですがそのうちの1時間が安定稼働のために電力量が約10倍かかるとすると、電気代の試算は以下のようになります。 <試算の仕方>
1時間の電気代を1とした場合
 24時間稼働の場合 1×24時間=24
 1回スイッチを切り16時間稼働した場合 1×15時間+1×10倍×1時間=25
 24時間稼働:16時間稼働=24:25

わずかではありますが、24時間稼働のほうが電気代が安い計算になります。

更に、就寝後オフにしてまた起床1時間前にオンにする設定をすると、例えば就寝時間を7時間とした場合、稼働時間は10時間ですが、1日2回立ち上がりが発生することになるので更に電気代が高くなります。

<試算の仕方>
1時間の電気代を1とした場合
 24時間稼働の場合 1×24時間=24
 2回スイッチを切り10時間稼働した場合 1×8時間+1×10倍×2時間=28

24時間稼働:10時間稼働=24:28
この試算を図にしてみました。

1日2回エアコンをオフにした場合と常時運転の電気代比較

1日2回エアコンをオフにした場合と常時運転の電気代比較
※平常運転時の電気代を1として算出しています。

全館空調の予約機能で最大限の電気代効率化が図れる

このようにエアコンは24時間稼働のほうが電気代が安いことが分かりましたが、24時間運転の全館空調も成す術なくつけっぱなしにしておくのも勿体ない話です。

全館空調には「温度予約」という機能があるメーカーもあります。
時間単位で設定温度を上げたり下げたりすることが出来る機能です。
不在時は必要最低限の温度設定にして、帰宅前に徐々に温度を調整していくことで、1日の電気代を最小限に抑えることができます。
例えば、冬季であれば
 起床の2時間前 設定温度-2℃
 起床の1時間前 設定温度-1℃
 起床時 設定温度
 外出時 設定温度-3℃
 帰宅の2時間前 設定温度-2℃
 帰宅の1時間前 設定温度-1℃
 帰宅時 設定温度
就寝1時間後 設定温度-3℃
設定温度を下げる分には余計な電力がかからないので一気に下げてしまい、上げるときだけ徐々に上げていきます。
このように細かな設定をすることで電力量を最小限に抑えられます。
ただし、この細かい設定を毎回自分で行うのはあまりに面倒ですが、リモコンの予約設定機能があれば手間を省くことができます。

ECO床暖の予約運転設定について

まとめ

「全館空調が24時間稼働するから電気代が高い」ということではありません。
ただし、細かな温度設定をせずに最大の温度設定状態でつけっぱなしにした場合、特に寒冷地にお住まいの方に「全館空調で月の電気代が4万円を超えた」というようなことが起きます。
こまめな温度調整の設定をすると「全館空調でも月の電気代はそれほど高く感じない」ということも出来るのです。

全館空調は365日稼働するので電気代が高い?を検証

全館空調は年間を通して稼働させるので電気代が高いのではないか、と思われる方も多くいらっしゃいます。即ち、冷暖房を使わない季節に稼働させるのは勿体ないという発想です。

全館空調は365日冷暖房を運転させるシステムではありません。
冷暖房が不要な季節は換気のみ運転することを推奨しています。

住宅の換気は建築基準法で定められています。
昔の住宅と違い、現在の住宅は省エネを意識して高断熱、高気密化されており、そのため密閉された居室内の空気がこもってしまうため、家具や建具の接着剤などの臭気によるシックハウス症候群や、台所やストーブの火器による一酸化中毒のリスクが発生します。
これを回避するために24時間強制的に換気する仕組みの設置が義務化されています。
換気に関する法規制について(国土交通省のサイトへ)

従って、全ての住宅には何かしらの換気システムが必ず設置されています。

換気には

  • 空気の取り入れ・排出の両方を換気扇で強制的に行う第1種
  • 屋外から取り込む空気「給気」側のみを換気扇で行う第2種
  • 屋内の汚染された空気を換気扇で強制的に吐き出す第3種
  • の3種類があります。

建設する住宅やお住まいの温度環境などでいずれかを選定して住宅に装備します。

換気システム3種の仕組み

全館空調のほぼ全てが第1種換気システムを標準装備しており、換気は常に運転モードにしておく、という使い方を推奨しています。

ところで、日本の住宅で冷暖房が必要な期間はどのくらいあるのでしょうか。
環境省によれば、室温目安は夏は28度、冬は20度が推奨されています。

夏季の推奨室温について(環境省サイト)
冬季の推奨室温について(環境省サイト)

これに対し、日本の年間の気温はこのようになっています。

日本の月別気温グラフ

引用元:日本の月別気温グラフ(気象庁のサイト)

このグラフを見ると、最低気温が20℃を下回り、最高気温が28℃を上回る月はなんと9か月もあります。
このグラフは平均値のため寒冷地域や温暖地域では差があるものの、大抵の地域では少なくとも7か月もの間は冷暖房が必要という計算になります。

冷暖房が不要な5か月の間は換気のみを行います。

まとめ

全館空調は、必要な時期だけ冷暖房を24時間運転をして、不要な時期は換気のみ運転させるようになっています。 換気システムはどの住宅にも設置が義務付けられており、全館空調の有無は関係なくどの住宅も年間を通して換気が稼働しています。

全館空調は居住空間全体に空調が行きわたるため、対象面積が多いから高い?を検証

全館空調は、居住空間の全てを均一温度にする空調システムです。
居室空間は住宅面積の約60%程度なので、居住空間ではない40%に空調費用をかけるのが勿体ない、という考えをお持ちの方がいらっしゃると思います。

では、残り40%にはどのような居住空間があるのでしょうか。
廊下、お風呂場、脱衣所、トイレ、玄関、書斎などの小部屋、ウォークインクローゼットなどが挙げられます。

冬季は脱衣所の寒さは脱衣が辛いので電気ヒーターを、トイレに座ると冷たいので温便座を、エアコンをつけられない小部屋にはホットカーペットを補助としてお使いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、エアコンだけでは床面が寒いので、床暖房システムを導入する住宅もあります。

このように、エアコンだけでお家の冷暖房が賄えているお宅は少ないことが分かります。

これらの補助冷暖房器具の電気代は意外と高いことをご存知でしょうか。

意外と高い補助冷暖房器具の消費電力量

主な補助冷暖房器具の消費電力量の一覧です。消費電力量が高く、月の電気代も高額であることが分かります。

※特定の商品の消費電力量ではありません。だいたいの目安をあげています。

下記の図は横にフリックして全体を見ることができます
補助冷暖房器具 対応する広さ 消費電力量 月間の電気代目安
温水式暖房 8畳用 800W 4,000円
電気式暖房 8畳用 1500W 7,300円
電気ヒーター 8畳用 1000W 3,300円
ホットカーペット 2畳用 500W 1,620円
扇風機 40W 130円

※月間の電気代について 1日あたりの稼働時間の想定:

  • 床暖房:6時間
  • 電気ヒーター:4時間
  • ホットカーペット:4時間
  • 扇風機:4時間

扇風機はそれほどでもありませんがそれ以外の補助冷暖房器具は、エアコンと比べると消費電力量がエアコンの安定稼働時と比べて何倍も必要です。

エアコンの冷暖房代にこれらが加算されているということです。

電気代だけでは測れないメリットも

また、費用の比較だけでは図ることのできないメリットが全館空調にはあります。住む人の健康や快適さを考えたとき、

  • 寒い廊下に出るのに上着を羽織る
  • 脱衣所に電気ヒーターを置くと小さな子供のやけどが心配
  • お風呂から寒い脱衣所に出たときにヒートショックが心配
  • 寒いウォークインクローゼットから冷たい服を着るのが辛い

などの不便さや不快を全館空調は解消してくれます。

まとめ

全館空調を採用していないご家庭は複数の冷暖房器具をご使用になっていることが多いので、トータルでかかる電気代との比較で評価、検討されることをお勧めします。

義務化された省エネ対策とメーカーの技術向上

これは全館空調に限らず全ての冷暖房器具メーカーに言えることですが、省エネルギー住宅の建設が義務化されている昨今では、メーカーの技術向上により高いコストパフォーマンスを発揮する空調関連製品が普及しています。

省エネの熱源システム、「ヒートポンプ」

ヒートポンプとは、気体が圧縮や膨張により発熱したり冷却したりする性質を利用して、低温部分から高温部分へ熱を移動させる技術で、空気中などから熱をかき集めて、大きな熱エネルギーとして利用する仕組みのことです。
従来型が1の電力で1のエネルギーを生んでいたのに対し、ヒートポンプでは1の電力で7ものエネルギーを発生することが出来ます。
省エネだけでなくCO2削減にも大きく貢献しています。

ヒートポンプ

引用元:一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターのサイトへ

ECO床暖が採用しているヒートポンプの仕組み

換気も省エネ化へ 「熱交換型の換気システム」が普及

先に述べた「住宅の24時間換気の義務化」ですが、換気は外気と室内の空気を交換するので、当然ながら「夏季は熱く、冬季は寒い外気」と「室内の快適な室温の空気」が交換される訳で、せっかくの冷暖房による快適な室温に不快な外気が入り込むことになります。
ここを改善したものが「熱交換型」の換気システムです。
これは第1種換気システムにのみ装備することができます。

夏の熱気は、室内で冷やした空気を利用して冷却し、冬の寒気は室内で暖めた空気を利用して暖めて、それから室内に入れるという仕組みです。
室内の室温の変動なく換気が行われるので、冷暖房の余計な負荷がかからない省エネルギーなシステムです。

全館空調の第1種換気システムはほぼ全てが熱交換型を採用しています。
熱交換型システムは様々なメーカーが開発、販売をしていますが、そのパフォーマンス具合や効果もしっかり見ていく必要があります。

換気システム
拡大してご覧ください

ECO床暖は、国内最高峰の温度交換効率95%を誇る換気システムAVH-95 サベスト(第1種全熱交換型セントラル換気システム)を採用しています。

まとめ

  • 様々な企業の努力で省エネ型のコストパフォーマンスの高い空調システムが普及しています。
  • 全館空調だから電気代が高いという発想ではなく、その空調システムがどんな省エネの工夫をしているかも見ていく必要があります。

住宅の断熱性能・気密性能と電気代の密接な関係

全館空調だけでなく様々な冷暖房器具を快適に低コストで使うためには、お住まいの住宅が断熱性能・気密性能に優れている必要があります。

どんなにコストパフォーマンスに優れた空調システムでも、住宅の断熱性能が低いと外気が室内に入り込みつづけ、空調が常時最大稼働するのでは電気代はとんでもなく高くつくことになります。

まとめ

空調の電気代を最小限に抑えるためには、空調機能だけではなく住宅の断熱・気密性能も大きく関わってきます。高断熱住宅を建ててくれる工務店の選定も一緒に検討していく必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
全館空調だから電気代が高い、エアコンだから電気代が安い、といった単体でのコストの評価の仕方ではなく、トータルの空調生活像を捉えていく必要があることをお分かりいただけましたでしょうか。
また、コストだけでは測れない快適さも考慮に入れていく必要もあります。

夢のマイホームには、最適な空調生活をご検討されることをお勧めいたします。

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