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全館空調のメリット・デメリットと、全館空調について知っておくべき4つのポイント

公開日 2020.09.01
更新日 2024.06.17
健康的な住まい全館空調

家中を快適な室温にしてくれる全館空調に魅力を感じる一方で、電気代や修理費などランニングコストに不安を感じる方は多いのではないでしょうか。

ここでは全館空調の気になるメリットとデメリットと、導入後に後悔しないためのポイントをご紹介します。

この記事のポイント
  • 全館空調の導入費や電気代の実態について知ることができる
  • 導入後に後悔しないためにどうすれば良いかが分かる

目次

1.全館空調のメリット

全館空調のメリットとして主に以下の内容が挙げられます。

1)家中の室温を均一に保てる

「全館」とある通り、リビング、キッチン、各居室、トイレ、洗面所、浴室に至るまで24時間一定の温度で快適に過ごすことができます。

この図のように、個別空調と全館空調では冷暖房の届く範囲に大きな違いがあります。

個別空調と全館空調では冷暖房の届く範囲

実際に全館空調を導入し、生活されている方の声をご紹介します。

  • 冬場、布団から出ても寒くないため朝も起きやすい
  • 蒸し暑い外から帰ってきたときの、家に入った瞬間の「ふわぁ」という玄関からの涼しさが最高
  • 梅雨時期にサーキュレーターなしで、部屋干しでも洗濯物が乾く
オンレイサイト 「お客様の声」より

温度差がうむヒートショックの健康被害とは

真冬に暖房をつけている場所とつけていない場所では10℃以上もの温度差があると言われています。
暖かい部屋や浴室から、急に10°以上もの気温が低い場所に移動したときに急激に血圧が上昇するのが原因で起こるヒートショックは、失神、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞などの健康被害に遭ったり、重度の場合は死に至ることもあります。

冬季の室内移動による温度と血圧の変化

冬季の室内移動による温度と血圧の変化

2)1台に集約できるからスッキリ

全館空調は、エアコンなどの冷暖房器具による露出がなくなるためインテリアの美観をキープできます。また、室外機の数も1台のみ(住宅の広さによっては2台の場合もあります)なので家の外の美観も保たれます。
個別冷暖房器具を設置しなくて済むので、個別の掃除も不使用時の出し入れの手間もありません。

3)温度だけでなく空気も快適

全館空調は家中を均一な温度にするだけではなく、優れた換気設備で花粉やPM2.5などの侵入を抑えて、外の新鮮な空気を取り込むことができます。
また全館空調の中には、菌やウイルスなどに効果のあるイオン発生機能を備えたものもあり、冷暖房と同時に家中の除菌・脱臭をすることで快適な温度・空気環境を作ることができます。全館空調の特徴として「第1種換気システム」という機械換気を使用するメーカーがほとんどです。

住宅建設時には24時間機械”換気システム”を導入することが義務付けられています。同様に義務化が予定されている高気密高断熱住宅の建設において、換気をきちんと行うことは空調以前にシックハウスなどのリスクから住む人を安全に守ります。

住宅で義務付けられている換気システム

住宅で義務付けられている換気システム

また、メーカーによっては空気清浄機能を実装した全館空調システムを販売しているところもあるので、セットで使用すると常に清浄な空気が保たれます。花粉除去も出来るものもあり、花粉症の人でも安心して洗濯物の室内干しができます。

2.全館空調のデメリット

全館空調のデメリットとして主に以下の内容が挙げられます。

1)全館空調の導入費用が高い

一般的なエアコンや補助冷暖房器具で賄うのに比べて、全館空調の導入費用は高いという印象を持たれがちです。40坪の住宅を例にみてみましょう。

  • 間取り 4LDK
    エアコン 5台+床暖房
    →5台の内訳(リビング×1、各部屋×4)

※この他に補助冷暖房器具が必要な場合は加算

導入費用 総額120万円くらい

一方、同じ規模の住宅の場合、全館空調は100万円〜300万円が相場といわれています。

導入費用「全館空調」と「個別空調」の比較図

導入費用「全館空調」と「個別空調」の比較図

この相場の幅が広い理由に以下の内容が挙げられます。

  • 空調室の有無
    居室内に空調室を1部屋設けるメーカーもあります。
  • 制御システムの複雑さの有無
    個別の温度設定など細やかな設定が出来る反面システム費用がかかります。
  • 配管の複雑さの有無
    配管工事、水抜き工事など高度な工事に専門施工員を派遣するメーカーもあります。

また、建築と一体で冷暖房設備を設置するということで、住宅ローンの対象とすることもできます(一方で固定資産税の対象ともなります)ので、費用面は工務店と相談してみてはいかがでしょうか。

2)全館空調の電気代が高い

全館空調は、稼働時間が長く空調する範囲も広いので、電気代が高くなるのではと心配される方が多いです。局所的に冷暖房を使用するエアコンなどと比較すると、全館空調の方が電気代は上がってしまうでしょう。

しかし全館空調は脱衣所、玄関、トイレなど家中の全ての空間を快適な温度にするのに対し、個別エアコンの場合、設置できない部屋も出てきます。そうすると補助冷暖房器具を増設していく必要があり結局電気代が高くなることに。電気代を比較する際には、エアコンだけでなく、扇風機やヒーターなどの補助器具分も忘れないでくださいね。

また全館空調の中には、時間ごとに設定温度を登録できるスケジュールタイマー機能があります。同じ設定温度で使うのではなく、1日の暮らしの中で時間ごとに必要な室温を設定することで電力の消費を抑えることができます。

全館空調の電気代について知りたい方は、こちらをご覧ください。
全館空調の電気代は高い?高いと思われる理由を検証

住宅性能が最重要

一番重要なこととして、全館空調システムを導入するには、高気密高断熱が十分に確保されている住宅であることが大前提です。高気密高断熱が十分に確保されている住宅とは下記を指します。

  • 壁、窓などの断熱性が高く、一度冷暖房した室温が外気温の影響を受けにくい
  • 換気システムが熱交換型で屋外に排気する空気の熱を回収する

全館空調を導入する際は、高気密高断熱住宅を建てる工務店を選び、全館空調メーカーが推奨している使い方を実践することが大切です。

3)全館空調は乾燥しやすい

暖房時は、室温が上昇することで相対湿度が下がります。これは全館空調に限らず、個別エアコンも同様です。
特に冬場など乾燥して困る場合には、各部屋に加湿器を設置したり、加湿機能つきの全館空調を導入することで乾燥が緩和されます。加湿器購入の際には、衛生面・消費電力・静音性・加湿量・管理のしやすさを比較して検討しましょう。

設定温度と体感温度の違いについて知りたい方は、こちらをご覧ください。
実は知られていない、設定温度と室温や体感温度の違いについて

4)全館空調のメンテナンスが面倒

全館を冷暖房する設備なので、メンテナンスに不安を感じる方も多いかもしれません。
しかし、実は空調機は1台のみなので、むしろ個別エアコンよりもお掃除の手間は楽といえます。
フィルターの掃除は2週間〜1か月に1度行うことを推奨しているメーカーがほとんどです。

また、フィルターは定期的に取り換えが必要なところもあります。この購入費用や取り換え時期については各メーカーによって異なりますので事前に確認することをおすすめします。

5)故障すると家中の冷暖房機能が止まってしまう

空調機1台で家全体を冷暖房しているので、故障した際は家の冷暖房機能が止まる恐れがあります。そうならないためにも、日々のお手入れとは別に専門スタッフによる定期的なメンテナンスをすることをおすすめします。
長年使用していると普段のお手入れでは手の届かない部分の汚れの蓄積が原因で故障してしまうこともあります。専門スタッフによる定期メンテナンスを行うことで、未然に故障を防げることもあるので、導入の際は保証と合わせてメンテナンス体制を調べておきましょう。

メーカーの保証体制

保証期間はメーカーによって2年〜10年が主流で、有償で長期保証を受けられるところもあります。重要な点ですので、事前に漏れなく確認をしておきましょう。
一般的にいわれる全館空調のメリット・デメリットは以上です。続いて実際に選んでいく際に知っておいていただきたい事柄をご紹介します。

3.全館空調を導入する前に知っておくべき2つのこと

ここまで一般的な全館空調のメリットとデメリットをご紹介しましたが、「全館空調」と一概に言ってもメーカーや、建てる住宅建設会社によって効果に差が出ます。全館空調導入後に後悔しないための極意をご紹介します。

1) まずは全館空調を展示場で体感する

全館空調についてネットで調べてみると、ブログやYouTube、SNSでも口コミを多く見かけ、内容も満足度の高い声から導入自体を後悔する声までさまざまです。先述した通り、全館空調はメーカーによっても大きな違いがあり、冷暖方法や設備、金額までも異なります。 さらには住む地域(気候)や、ご家族の体感も三者三様。
このように空調は、ネットの情報からでは判断しきれない部分も多いため、まずはお近くの展示場で体感することをおすすめします。特に真夏や真冬に体感すると、より室内の快適さに感動しますよ。

2) 住宅建設会社は慎重に選ぶ

住宅建設会社を選ぶ基準はさまざまですが、全館空調の導入を検討しているのであれば、高気密高断熱の家が大前提です。その後のランニングコストに大きな影響が出るので、性能の高い家を建ててくれる会社を選ぶようにしましょう。

全館空調業界の全体像

全館空調のメーカーは現在15以上あり、さらに販売方法、冷暖方式もさまざまです。選択肢が多くどれを選べば良いのかお悩みの方向けに、業界の全体像をご紹介します。

全館空調のマッピング

全館空調のマッピング

【販売方式の種類】

  • ハウスメーカー系列
  • ビルダーフリー

【冷暖方式の種類】

  • 天井吹き出し型
  • 床下冷暖房型/li>
  • 壁パネルからの輻射熱
  • 壁掛けエアコン型

より詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
【全館空調を徹底比較】各メーカーの比較すべきポイントを知ってライフスタイルに合った1台を見つけよう!

まとめ

全館空調には多くのメリットがありますが、当然デメリットを感じる人もいます。さらにひと口に全館空調といっても選ぶメーカーや、建てる住宅建設会社、住まいのエリアによって環境が異なるため、一概に良し悪しは判断できません。まずはお近くの展示場で全館空調を体感してみてください。後悔のない空調選びをされることをおすすめします。

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