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全館空調のメリット・デメリットと、全館空調について知っておくべき4つのポイント

公開日 2020.09.01
更新日 2023.06.16
健康的な住まい全館空調

「全館空調」を新築時に導入するかどうか検討する際に、そのメリットとデメリットを知っておきたいという方も多いと思います。
ここでは全館空調を導入して本当に後悔しないか?気になるメリットとデメリットについてご紹介していきます。

ここがポイント!
デメリットは自分の情報力で評価していくことが重要

全館空調には多くのメリットがありますが、当然デメリットもあります。
しかしデメリットについては、全館空調メーカーの選び方次第で解消されるものもありますし、現在の各メーカーの技術力で改善されているものもあります。

ひと口に全館空調といっても販売方式、冷暖方式、価格帯は様々
販売方式
2パターン(ハウスメーカー系列の全館空調、ビルダーフリーの全館空調)
冷暖方式
4パターン(天井吹き出し型、床下冷暖房型、壁パネルからの輻射型、壁掛けエアコン型)
価格帯
お手頃なタイプは130万円以上、高額なタイプは230万~300万

目次

1.全館空調のメリット3つ

全館空調のメリットとして主に以下が挙げられます。

  1. 家中が1年を通して均一温度に保てる。
  2. 露出物がなくスッキリした室内。大空間の間取りも作りやすい。
  3. 温度だけでなく清浄な空気環境が保てる。

1)家中が1年を通して均一温度に保てる。

「全館」とある通り、リビング、キッチン、各居室、トイレ、洗面所、浴室に至るまで24時間365日同じ温度で過ごすことができます
ご高齢の方が冬場に起こしやすいヒートショックも、夏場の熱中症も防止できます。
家族が寒暖による健康被害を被らない、健康的に過ごせる冷暖房システムと言えます。

この図のように、個別空調と全館空調とでは冷暖房の届く範囲に大きな違いがあります。

ヒートショックとは

真冬に暖房をつけている場所とつけていない場所では10℃以上もの温度差があると言われています。
暖かい部屋や浴室から、急に10°以上もの気温が低い場所に移動したときに急激に血圧が低下するのが原因で起こるヒートショックは、失神、心筋梗塞、不整脈、脳梗塞などの健康被害に遭ったり、重度の場合は死に至ることもあります。

冬季の室内移動による温度と血圧の変化
冬季の室内移動による温度と血圧の変化  

2)露出物がなくスッキリした空間。大空間の間取りも作りやすい。

室内機を空調室または収納内に設置するタイプの全館空調は、室内に露出物がなくなるためインテリアの美観をキープできます。また、室外機の数も室内機と同じなので家の外の美観も保たれます。
エアコンやストーブ、ファンヒーターを設置しなくて済むので、個別の掃除も不使用時の出し入れ手間もありません。
また、広い間取りを作りたいときにエアコンの能力を考慮する必要がないので、広さも高さも自由に設計が出来るのも大きな魅力です。

3)温度だけでなく清浄な空気環境が保てる。

全館空調の特徴として「第1種換気システム」という機械換気を使用するメーカーがほとんどです。
住宅建設時には”換気システム”を導入することが義務付けられていますが、この第1種換気システムは機械による強制換気です。同様に国から義務化された高断熱・高気密住宅の建設において、換気をきちんと行うことは空調以前にシックハウスなどのリスクから住む人を安全に守ります。

住宅で義務付けられている換気システム

また、メーカーによっては空気清浄機能を実装した全館空調システムを販売しているところもあるので、セットで使用すると常に清浄な空気が保たれます。花粉除去も出来るものもあり、花粉症の人でも安心して洗濯物の室内干しができます。

2.全館空調のデメリット5つ

全館空調のデメリットとして主に以下が挙げられます。

  1. 全館空調の導入費用が高い
  2. 全館空調の電気代が高い
  3. 全館空調は乾燥しやすい
  4. 全館空調のメンテナンスが面倒
  5. 故障すると家中の冷暖房機能が止まってしまう

1)全館空調の導入費用が高い

40坪の住宅を例にとってみますと、4LDKにエアコン5台と床暖房を入れるのが一般的と考えた場合導入費用は総額およそ120万くらいと考えられます。
それ以外に補助冷暖房器具が必要な場合は加算されます。
この費用に対して先に述べた全館空調の導入費を比較することになりますが、メーカーによって導入費に大きな違いがあるので、メーカーに問い合わせるなどして正確な費用を確認した上で検討することをお勧めします。

高気密高断熱住宅との関連性も重要

ここで1つ大きなポイントがあります。
国が高気密高断熱住宅を義務付けましたが、これにより工務店の意識が高まり、自己努力による切磋琢磨により、高気密高断熱性能の高い住宅を建設する工務店が増えています。
国の基準をはるかに超える、高い機能を備えた住宅を建設する工務店があるということです。
これにより、小型の設備でも十分快適な温度環境を提供できるようになってきています。

即ち、導入費用と得られるパフォーマンスは必ずしも比例している訳ではないのです。
「高気密・高断熱」って必要? デメリットから見えてくる、全館空調とのベストマッチングの理由とは

2)全館空調の電気代が高い

これも非常に心配される要素です。
しかし、導入費同様に、高気密高断熱の性能が高い住宅であれば小さいエネルギーで十分な冷暖房環境を得ることができるようになっています。

全館空調の電気代に関してはこちらでもご紹介しております。

全館空調の電気代は高い?高いと思われる理由を検証

電気会社の見直しも効果大

また、電力自由化に伴いご家庭のライフスタイルに併せて最適な電力会社を選べるため、選び方によっては家庭全体の電気代をセーブできることもありますので、新居を構えるのを機に見直しをされることをお勧めします。
価格コムの電気代シミュレーションサイトへ(外部リンク)

3)全館空調は乾燥しやすい

全館空調の家は非常に乾燥しやすいと言われています。
冬季の送風式暖房は、設定温度よりも高い温度の空気が吹き出されますが、温度と湿度は反比例の関係にあるため、高い温度での送風が湿度を奪う大きな原因です。

設定温度と体感温度の違いに関してはこちらでもご紹介しております。

実は知られていない、設定温度と室温や体感温度の違いについて

また乾燥をカバーするために、加湿機能つきの全館空調も販売されています。

4)全館空調のメンテナンスが面倒

全館空調メーカーは、フィルターお掃除は2週間~1か月に1度行うことを推奨されているところが殆どです。
ただし、個別エアコンも実はまめにお掃除をしないと能力が落ちて稼働負荷が増え電気代が高くなるので、ここの負担はあまり変わらないと言えます。

また、フィルターは定期的に取り換えが必要なところもあります。この購入費用や取り換え時期については各メーカーによって異なりますので事前に確認することをお勧めします。

5)故障すると家中の冷暖房機能が止まってしまう

これもよく心配ごととして挙がる項目ですが、殆どのメーカーは定期メンテナンスを推奨しており、また2年~10年のメーカー保証があります。

先に述べた通り、全館空調メーカーはハウスメーカー系列若しくは加盟店制度をとっており、売り切り御免スタイルの販売方式をとっていないのは、購入者への一次フォローを施工会社である工務店が行うというポリシーによるものです。

但し工務店によってはアフターフォローをおざなりにするところもあります。全館空調に限らず、家は長く住む期間には様々なメンテナンスを伴います。
建てた後も工務店との長い付き合いが続きますので、対応がしっかりした工務店を選ぶことが安全に暮らすには必要なことと言えるでしょう。

メーカーの保証体制例

※各社のホームページなどWEB上で確認できたものだけを掲載しています。

下記の図は横にフリックして全体を見ることができます
メーカー名・商品名 保証制度
三井ホーム「スマートブリーズ」 保証2年。有料(7万円)で10年に延長
三菱地所ホーム「エアロテック」 10年間の長期保証&10年間の無料点検
アズビル 保証10年。但し定額の保証費が別途かかる
オンレイECO床暖システム 最長10年(無償5年・有償で5年延長)

一般的に言われる全館空調のメリット・デメリットは以上です。続いて実際に選んでいく際に知っておいて頂きたい事柄をご紹介します。

3.全館空調について知っておくべき4つのポイント

全館空調について知っておいて頂きたい重要なポイントがあります。それは、全館空調は一見同じ設備のことを指すように思われがちですが、メーカーによって、その販売方針や冷暖方法、設備や金額までも大きな違いがあるということです。

業界の全体像マッピング

全館空調のメーカーは現在15以上あります。
業界の全体像をマッピングでご紹介します。

全館空調のマッピング

販売方式は2つのパターンが存在

1)ハウスメーカー系列の全館空調

ハウスメーカー系の全館空調メーカーは、別のハウスメーカーで建設する場合は導入することが出来ません。

ハウスメーカー系列の全館空調メーカー

2)ビルダーフリーの全館空調

工務店が販売代理店になる加盟店制度をとっている全館空調メーカーです。
単体の家電製品と異なり、家全体に関わる設備のため、安全面やメンテナンスの観点から、加盟店制度をとらない売り切り制のメーカーはありません。
一方で全館空調システムを抱えているハウスメーカーでは、ビルダーフリーの全館空調を導入することができません。

ビルダーフリーの全館空調メーカー例

冷暖方式は4つのタイプが存在

全館空調システムに共通しているのは、居室内に1台(家の広さによっては2台)の空調室内機をセントラル化して、居室全体を冷暖するという方式です。
その室内機を使ってどこから冷暖するかはメーカーによって異なります。

1)天井吹き出し型

天井内にダクトを設置し、天井からの吹き出し口から冷暖気を送ります。

引用元:Z空調

天井吹き出し方のメーカー例

2)床下冷暖房型

床下の基礎部分を断熱し冷暖気を蓄熱し、床からの輻射熱とガラリによる送風で家全体を冷暖します。

床下冷暖房型のメーカー例

3)壁パネルからの輻射型

壁に大型冷暖房パネルを設置し、パネルからの輻射熱で家全体を冷暖します。

引用元:光冷暖​

壁パネルからの輻射型のメーカー例

4)壁掛けエアコン型

1台の壁掛けエアコンの能力を使い、各部屋の間仕切りに採風場所を設けて家全体を冷暖します。

壁掛けエアコン型のメーカー例

メーカーによって大きく異なる初期導入費用

全館空調の価格帯は、メーカーによって大きく異なります。
大きく分けると3つの価格レンジに分けることができます。

価格レンジ別メーカー一覧

※40坪程度の住宅面積を前提にした費用です。
※価格帯は各社のホームページなどWEB上で確認できたものだけを掲載しています。

下記の図は横にフリックして全体を見ることができます
価格帯レンジ メーカー名
230万~300万
  • 三菱エアリゾート
  • 三井ホーム「スマートブリーズ」
  • ミサワホーム「エアテリア」
130万~230万
  • 住友林業「エアドリーム ハイブリッド」
  • トヨタホーム「スマート・エアーズ」
  • アズビル 「きくばり」
  • YUCACOシステム研究会「YUCACOシステム」
  • Z空調
  • オンレイECO床暖システム

この価格帯の差として主に以下が挙げられます。

  • 空調室の有無 居室内に空調室を1部屋設けるメーカーもあります。
  • 制御システムの複雑さの有無 個別の温度設定など細やかな設定が出来る反面システム費用がかかります。
  • 配管の複雑さの有無 配管工事、水抜き工事など高度な工事に専門施工員を派遣するメーカーもあります。

忘れてはいけない建築の追加工事

また、考慮しておかなければいけないのが、全館空調導入に伴い「建築の追加工事」も発生するということです。
空調室の建設工事、壁や天井の配管用の建築工事は全館空調の設備コストとは別でかかります。全館空調の導入コストを調べる際には、伴う建設コストも把握することが必要です。建設コストについては細かい算出は困難でも、追加の資材や工事手間からおおよその金額を工務店から聞くことは出来ると思われます。

まとめ

  • 全館空調には多くのメリットがありますが、当然デメリットもあります。
    デメリットについても全館空調メーカーの選び方次第で解消されるものもありますし、現在の各メーカーの技術力で改善されているものもあります
    自分の情報力で評価していくことが重要です。
  • 全館空調といっても販売方式、冷暖房方式、価格帯は様々です。
    ご自分のライフスタイルや予算などの条件に見合うメーカー探しが重要です。

一生暮らす家には最適な空調環境があるかないかで快適さが大きく変わります。
後悔のない空調選びをされることをお勧めします。

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