みなさんは日頃からご自宅でどのくらい換気をしているでしょうか。掃除をしたあと、布団を干すとき、においが強く出る料理をしたとき……さまざま場面で換気を行っていると思います。近年、高気密・高断熱の住宅が増え、私たちはより快適な暮らしをすることができるようになりました。しかし、高性能な住宅になっても換気が大事であることは変わりません。ここでは、換気の重要性を知り、高気密・高断熱の住宅で快適な住まいを手に入れるためのヒントをご紹介します。
- 換気のメリットが分かる
- 換気の種類やその違いを解説
監修者:遠藤 秀次(ケィ・マックインダストリー株式会社 )
目次
1.住宅における換気の重要性とは?
快適な住まいには、新鮮な空気が必要です!
私たち人間が1日に摂取できるものの中で、最も多いのが空気です。その中でも、室内の空気が多いといわれています。一般的に室外と比較して、室内の空気は循環が行われないために空気が汚れているといわれ、空気の温度や汚れによって健康にも影響します。
引用元:空気の汚れや温度は健康にも影響
空気に含まれる酸素は大事
人間は、呼吸することでエネルギーを生み出して内臓や筋肉の動きを高めています。そのため、酸素不足が発生すると、代謝が悪化したり、疲れやすくなったり、さらには頭痛や肩こり、眠気、集中力や記憶力の低下といった症状が起こってしまいます。
寝ている間にCO2濃度は高くなる
室内でのCO2(二酸化炭素)の濃度は要注意。 CO2濃度が高くなると、頭痛やめまい、吐き気をもよおすなど人体に悪影響をおよぼします。「建築基準法」や「ビル衛生管理法」では居室内の二酸化炭素濃度を1000ppm以下に保つように定められています。
参考:「密」にならない換気
室内にはいろんな物質が空気中に浮遊しているので、体への悪影響につながったり、快適な環境で過ごすことができなくなってしまいます。そのため、換気によるクリーンな空気を室内に取り込む必要があります。
換気にはさまざまな効果が!
そもそも換気とは、部屋の中の空気と、外の空気を入れ換えることで、部屋の空気中にある汚染物質を、部屋の中から外へ出したり、薄めたりすることです。一般的に窓を開けることが換気と思っている方も多いですが、正しくは室内のすべての空気が外気と入れ替わることをいいます。
換気の目的は空気の入れ替えですが、換気をすることによってほかにもさまざまな効果があります。
- ホコリや有害物質、花粉やPM2.5などの汚染物質を部屋の外に排出する。
- さまざまな原因で発生する悪臭や汚れた空気が部屋に溜まるのを防止。
- 水蒸気を排出し、結露やカビが発生することによる建材の劣化を防止。
こうした効果があり、換気は快適な住まいの環境を実現するために重要な行動なのです。
換気の方法としては、窓を開けて風を通す「自然換気」、換気扇を使って空気を入れ替える「強制(または機械)換気」、そして2つを組み合わせる方法があります。
正しく換気を行うためには、空気の流れをつくることが重要です。室内の空気を清潔に保ち健康的かつ快適に過ごせるよう効率よく換気ができるようにしましょう。
換気の頻度/時間
換気は、時間よりも回数を増やす方が効率的です。2時間に1回、5~10分程度が目安とされています。
換気するタイミングは朝がおすすめです。寝ている間のこもった空気を入れ替えて、新鮮な空気を吸う事で、ボーとしている頭がすっきりします。さらに、時間帯についても、比較的湿度が低い時間帯に換気を行うとよいでしょう。春夏は12時~16時、秋冬は12時~14時がおすすめです。
冬場は寒くてどうしても換気がおろそかになりがちですが、室内に滞留するウイルスの除去や結露防止のためにも、冬こそ意識的に換気を行う必要があります。
一般的な6~8畳の部屋なら、5分程度で空気が入れ替わるといわれています。仕事や学校で日中は室内にいる時間が短いという方でも、せめて1日1回の換気は心がけたいですね。
24時間換気システムの義務化
近年の建物は、換気扇だけでなく「24時間換気システム」が取り付けられています。24時間換気システムとは、従来式の自然換気とは異なり、強制的に室内の空気の入れ替えを行うことができる換気設備のことです。
建築において断熱性や気密性の高い住宅が多くなっていますが、一方で気密性の高さから住宅の建築資材に含まれる化学物質が室内に滞留し、シックハウス症候群やアレルギー症状を訴える人が倍増しました。こうしたことをうけて、2003年の建築基準法改正によって24時間換気システムの設置義務化が定められました。
シックハウス症候群対策には、24時間換気が必要!
シックハウス症候群は、建材・部材に含まれるホルムアルデヒド、トルエン、キシレンなどの揮発性有害化学物質が原因で、目やのどの痛み、吐き気、頭痛、めまいなどを発症する症状のこと。湿度が高い場合には、細菌やカビ、ダニが繁殖しやすくなるだけでなく、一般的な石油ストーブなどから一酸化炭素や二酸化炭素、窒素酸化物などの汚染物質の発生、さらにたばこの煙にも有害な化学物質が含まれていて、こうしたものが原因となって起こる症状です。
自宅やオフィスなどの室内から離れると症状が軽くなり、戻ると再び症状が起こるといった場合は室内環境が原因となっているのかもしれません。シックハウス症候群にならないためには、換気はとても大切なのです。
引用元:空気の汚れや温度は健康にも影響
常時換気と局所換気
24時間換気システムは「常時換気」と呼ばれていて、システムが稼働している間は空気の入れ替えが絶えず行われています。
室内で発生する化学物質や呼吸で排出される二酸化炭素などを排出し、きれいな外気を取り入れる目的で設置されているものです。
1時間で家全体の約半分の空気を排出し、同量の外気を吸い込む必要があるため、2時間程度で全体の空気の入れ替えが可能となります。
一方、換気扇を使って局所的に換気する方法は「局所換気」と呼ばれています。空気を入れ替える範囲は狭いですが、換気する力は強く、短時間で空気の入れ替えを行うことが可能です。主に湿気やニオイが発生しやすい浴室やキッチン、トイレなどで使われています。
換気システムの種類
換気システムには、第1種換気、第2種換気、第3種換気の3つの種類があります。3つのシステムの特徴を説明します。
換気の種類 | 第1種換気 | 第2種換気 | 第3種換気 |
---|---|---|---|
給気 | 機械 | 機械 | 自然 |
排気 | 機械 | 自然 | 機械 |
特徴 | 給気・排気の両方をファンで強制的に行う方法。
部屋ごとにダクトを導入することができるので、空気の流れを制御しやすく、安定的かつ正確に換気を行うことが可能。 |
給気のみを強制的に行う方法。
屋内の汚れた空気を給気の押し出す力で、各部屋にある換気口から自然と押し出されるようになっている。 |
排気のみを強制的に行う方法。
給気口にファンはつかず、各部屋に設置された換気口から自然に給気が行われる。 |
メリット | 熱交換システムをプラスすれば外気温の影響を受けない。 | 菌や汚染物質などの侵入を防ぐ。 | 導入コストが低い。 |
デメリット | 導入やメンテナンス費用がかかる。 | 気密性の非常に高い建物でなければメリットが成立しない。外気温の影響を受けるため、空調効率が落ちる。 | 外気温の影響を受けるため、空調効率が落ちる。 |
第1種換気
給気と排気それぞれにファンを設置して、強制的に換気を行うシステムです。
機械で常に空気の入れ替えを行うので、安定的かつ正確に換気を行うことができます。さらに「熱交換システム」をプラスすると、給気の際に排気する空気の熱を利用して温度差を緩和するので、季節による外気温の影響を受けにくくなります。また、給気口にフィルターを組み込むと花粉や塵、虫などの侵入を防ぐことも可能です。
しかし、給気と排気の両方にファンが必要なため導入コストがかかってしまうデメリットがあり、電気代やメンテナンスコスト、修理期間中の空調をどうするかにも注意が必要です。
第2種換気
給気のみを強制的に行う換気システムです。
空気を入れる力が強いため、室内は常に「加圧」状態となります。給気口以外からの外気が室内に入り込みにくく、菌や汚染物質の侵入を防ぐ衛生面のメリットが非常に高いのが特徴です。そのため、工場や研究所、無菌室や手術室などで多く導入されています。
ただし、建物に隙間があると上記のメリットが成立せず湿気も溜まってしまうので、あまり住宅では採用されません。また、排気口付近はどうしても外気温の影響を受けてしまいます。
第3種換気
排気のみを強制的に行うシステムです。
導入コストが低いこともあり、戸建て住宅やマンションに多く使われています。全ての部屋に給気口が必要なのが特徴で、排気は一般的にトイレや浴室などの換気扇で行います。室内に湿気が溜まりにくく、システムにかかる電気代も安いといったメリットがあります。
しかし、第2種換気と同じく給気口付近はどうしても外気温の影響を受けてしまいます。そのため、空調効率が落ちてしまうデメリットがあります。エアコンの効きが悪いからと給気口を閉めてしまい、実はきちんと換気できていない!なんてケースもあるようです。
2.高気密・高断熱の家で快適な暮らしをゲット
高気密・高断熱とは?
住宅性能がよい家としてハウスメーカーや工務店でよく聞くようになった「高気密・高断熱」の住宅。
精度の高い建築部材や防湿シート、断熱材などを使用して隙間が生まれないように建てられ(=高気密)、断熱材を用いたり断熱性の高い窓を採用したりして、断熱性能を高めた(=高断熱)住宅のことを指します。
高気密・高断熱の住宅は、家全体が密閉・保温された状態になるので、外の暑さや寒さの影響を受けにくいため冷暖房効率がよく省エネな住宅ともいわれています。
ただし、先でも述べたようにその気密性の高さから換気はしっかり行わなければならず、どのような換気システムを選ぶかが大切になってきます。
ではここで、高機密・高断熱住宅の特徴をまとめてみます。
高機密・高断熱住宅の特徴まとめ
- 年間を通して快適に過ごせる!
- 部屋ごとの急激な温度変化がないため、ヒートショックの危険性が少ない!
- 冷暖房効率がよいので、光熱費の節約ができる!
- 高い断熱性があると結露が発生しにくい!
いかがでしょうか?共通して言えるのは、外気温や隙間風などの影響を受けにくいため年間を通して快適に過ごせるということです。以上のことから、高機密・高断熱の特徴を最大限に活かし、より快適に過ごすための換気システム選びは、換気の際に外気温の影響をいかに受けにくくするかがポイントであることがわかります。
高気密・高断熱の住宅についてメリット・デメリットをまとめたこちらも読んでみてください。
高気密・高断熱の住宅に適した第1種換気システム
3種類の換気システムがあることをご紹介しましたが、高気密・高断熱の住宅には第1種換気との相性が非常に良いといえます。
なぜなら、高気密・高断熱住宅では常に換気が必要です。しかし、外気の影響を受けてしまっては、せっかくのメリットが損なわれてしまいます。第1種換気に「熱交換システム」をプラスすることで、「外気の影響を受けにくく、空調効率が良い」というメリットを維持しながら、24時間換気が可能となるのです。
おすすめは、全館空調!換気
高気密・高断熱の住まいのメリット、デメリットそしてこの高性能住宅において適した換気システムが第1種換気システムであることをご紹介しましたが、快適かつ健康に過ごすために導入をおすすめのしたいのが、全館空調システムです
全館空調は、住まい全体の空調管理を一括で行うシステムです。全館空調を住まいに採用すれば、快適な環境をつくることにつながります。
- 第1種熱交換型換気システムだと冷暖房効率がよい!
- 保温効果が高い住宅と相性がいい!
全館空調について詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
参考:
全館空調のメリット・デメリットと、全館空調について知っておくべき4つのポイント
「高気密・高断熱」って必要? デメリットから見えてくる、全館空調とのベストマッチングの理由とは
まとめ
いかがでしたか?
近年、住宅は高気密・高断熱の高性能住宅が多くなっていますが、メリットも多い一方でデメリットもあります。気密性の高い住宅は「換気」が大切であるということがおわかりいただけたと思います。換気によって、私たちの健康も保たれるということを念頭に置きながら、住宅選びをしてみてくださいね。
1963年生まれ 北見工業大学 機械工学科 卒業
2級建築士・1級管工事施工管理技士・空調衛生工会 設備士・気密測定技能者
ケィ・マックインダストリー株式会社 アイレ事業部 技術開発部 課長としてアイレ換気商品の開発を担当
24時間換気システムの開発に携わって約25年
お家の換気システムから、安心・快適な空気をお届けします。
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