「土地選び」で後悔しないためには、その後の家づくりを念頭に選ぶことが重要です。ここでは、建築基準法で定められた土地や住宅建設に関わるルールや重要用語解説をしながら、土地を見極める上で有益な情報をご紹介していきます。
目次
1.土地選びを始める前に
これから土地を探しはじめる方は、まず次の3つのことを明確にしておきましょう。
- 土地購入の目的
- 土地に求める条件とその優先順位
- 土地購入の予算
土地探しを始めたばかりで進め方が分からないという方は、ぜひこちらの記事をご参考ください。
2.土地選びで重要な用語解説
土地選びをしているとさまざまな専門用語を耳にするでしょう。ここでは土地に関する用語の解説をしながら、土地に関する条件や制限についてご説明します。
用途地域と3つの制限
「用途地域」とは、計画的な市街地を形成するため、住居、商業、工業など大枠としての土地利用を13種類に分けたものです。用途地域によって建ぺい率や容積率など、建物への制限内容も異なってきます。気になる土地がどの用途地域かは不動産会社に確認できます。
用途地域 | 特徴 |
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第一種低層住居専用地域 | 低層住宅のための地域です。小規模な店舗や事務所を兼ねた住宅、小・中学校などが建てられ、建物には高さ制限(10mや12mなど)があります。 |
第二種低層住居専用地域 | 主に低層住宅のための地域です。高さの制限は第一種低層住居専用地域と同様で、150m2までの一定の店舗が建てられます。 |
第一種中高層住居専用地域 | 中高層住宅のための地域です。病院・大学、500m2までの一定の店舗が建てられます。建物の高さ制限はありません。 |
第二種中高層住居専用地域 | 主に中高層住宅のための地域です。第一種中高層住居専用地域で可能な建物に加え、2階建て以内かつ床面積1500m2以下の店舗や事務所が建てられます。 |
第一種住居地域 | 住宅の環境を守るための地域です。第一種・第二種中高層住居専用地域で可能な建物に加え、3000m2までの店舗や事務所、ホテルが建てられます。 |
第二種住居地域 | 主に住宅の環境を守るための地域です。第一種住居地域で可能な建物に加え、カラオケボックスなども建てられます。 |
準住居地域 | 道路の沿道において、自動車関連施設などの立地と、これと調和した住居環境を保護するための地域です。 |
田園住居地域 | 農業と調和した低層住宅の環境を守るための地域です。住居に加え、農産物の直売所などが建てられます。 |
近隣商業地域 | まわりの住民が日用品の買い物などをするための地域です。住宅や店舗の他、小規模な工場も建てられます。 |
商業地域 | 銀行や映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域です。住宅や小規模な工場も建てられます。 |
準工業地域 | 主に軽工業の工場やサービス施設等が立地する地域です。危険性や環境悪化が大きい工場を除き、ほとんどの工場が建てられます。 |
工業地域 | どんな工場でも建てられる地域です。住宅や店舗は建てられますが、学校・病院・ホテルなどは建てられません。 |
工業専用地域 | 工場のための地域です。どんな工場でも建てられますが、住宅は建てられません。 |
次に、用途地域ごとに異なる3つの制限について解説します。
1.建ぺい率
敷地面積(建物を建てる土地の面積)に対する建築面積(建物を真上から見たときの面積)の割合です。土地のサイズ目一杯に家を建てられるわけではありません。希望の間取りが実現できるスペースを確保できる土地か確認しましょう。
2.容積率
敷地面積に対する3次元空間の割合です。その土地の延べ床面積の制限を定めるための基準です。建ぺい率と合わせて確認しておきましょう。
参考:「建蔽率(建ぺい率)」「容積率」ってなに? 知っておきたい、建物の規制とは
3.斜線制限
建物を建てるときにその周辺の道路や建物の日当たりや風通しを確保するための制限で、住宅を建てる際の屋根や建物上部の形状、傾きの度合い、高さの限度が制限されます。斜線制限には下記の3つの種類があります。
隣地斜線制限:隣り合う建築物についての制限
道路斜線制限:向かい合う建築物や道路についての制限
北側斜線制限:北側に接する敷地についての制限
住宅建築における制限事項がないか、不動産会社に確認しておきましょう。
参考:道路斜線制限って建物の高さや形にどう影響するの?緩和されるのはどんな場合?
【ここでのポイント】
不動産会社だけでなく、住宅建設会社にも確認してもらうこと。
住宅建設会社がまだ決定していなくても、助言を求めることは可能です。営業の一環として相談に乗ってくれるでしょう。相談したら依頼しなければいけないということはありません。この工程で信頼できる会社なのか見極めることもできます。
3.土地の状態も確認する
用途地域の制限以外にも、その土地自体が持つ条件もあります。
接道義務
幅員4m(特定行政庁が幅員6m以上を道路として取り扱う区域は6m以上)の建築基準法上の道路に、2m以上接した敷地(土地)でなければ住宅建設ができない決まりがあります。
【ここでのポイント】
建築基準法ができる前から家が建っていた土地など、接している道路の幅員が4mに満たない場合、住宅建設を可能にするため道路の中心線から2mまで、敷地と道路の境界線を敷地側に後退させなければならない「セットバック」という決まりがあります。セットバック部分も購入費用が発生しますが、自由に使うことはできません。さらに、セットバック部分の固定資産税の免除には申請が必要となりますので、注意が必要です。
地盤の強度
地盤調査は土地購入後に行うものですが、その結果「地盤が弱い」と改良工事で費用がかさんでしまうリスクがあります。土地の使われ方や何があった場所なのか、歴史を見ると地盤の強度をある程度把握できます。調べ方を2つ紹介しますので、あらかじめ確認しておきましょう。
①国土地理院地図で調べる
地盤の固い「台地」なのか、それとも軟弱地盤の「低地」なのか、時代ごとにどのような土地の使われ方をしてきたのかを国土地理院地図で確認できます。
②登記事項証明書で調べる
法務省に交付請求ができるもので、過去にどのような用途で使われていたのか確認することが可能です。手数料は申請方法により異なり、480〜600円かかります。
参考:登記手数料について
家づくりの豆知識 ~「敷地調査」や「地盤調査」とは~
敷地調査
建築基準法の規則に沿って、その土地でどのような家を建てることが可能かを調べる調査で、次のような項目があります。
①市役所や町役場など行政機関にて、その土地に家を建てて住むにあたっての制限やルールを確認する役所調査。
②実際にその土地を訪れ、土地の状況、地盤、道路との高低差、隣地との関係など、目で見て確認できるものを調べる現地調査。
③家を建てるときの制約を知るために、土地の形状を把握する現地測量。
④土地の権利関係などを法務局やインターネットにて調べる法務局調査。
地盤調査
建物を建てても安全な土地か地盤を調べる調査です。
地盤調査は、阪神・淡路大震災後の2000年(平成12年)に建築基準法の改正があり義務化されています。どちらも家づくりをする上でとても重要な調査であり、一般的には土地購入後に住宅建設会社で進めます。
地盤調査の詳細について書いた記事も参考にどうぞ。
【地盤調査】どんな事をするの?何が分かるの?地盤調査の疑問を解決します
角地と中地
角地(かどち):交差する2つの道路に接する角にある土地のこと。
中地(なかち):三方が囲まれた1つの道路にしか接していない土地のこと。
参考:土地探しのコツ3点!土地の探し方、希望に合った土地がないときの対処法
一般的に角地の方が「日当たりが良い」「開放感がある」「間取りの自由度が高い」など人気があり、費用も高めになっています。しかし、これらは周辺環境によって大きく異なります。一般的な意見に惑わされることなく、実際にその土地を自分の目で確認し判断しましょう。中地であっても条件の良い土地や、角地であっても希望の家づくりにそぐわない土地である可能性は大いにあります。
参考:角地って本当に便利? トラブルを避けるために押さえておきたい3つのポイント
4.売買契約を結ぶ前にやるべき2つのこと
1)自分で現地を確認する
条件や制限だけでは計り知れない特徴が必ずあります。後悔しないためには、必ず現地に自分で足を運び、時間帯や曜日を分けて何度も確認しておくことが重要です。周辺の雰囲気や見えるものは、時間帯や曜日によっても異なり、何度か足を運ぶことで見えてくることがあります。また可能であれば、親族や知人など第三者にも同行してもらい意見をもらうと、自分では注視していなかったことの発見につながり、場合によっては家を建てる前に必要な対策の気づきになる可能性もあります。下記に見極めポイントをまとめましたが、それ以外にも気になる点があれば、不動産会社に相談し不安要素を早めに解消しておきましょう。
【現地での見極めポイント】
土地の状況 | ・土地の高低差 土地に高低差があると、建築前に造成工事が必要になる場合があります。 ・周辺に災害のリスクがある場所はないか 市区町村の窓口やホームページで災害に関するハザードマップが公開されています。 ・敷地の境界線 隣地との境にある塀や垣根は、どの部分までが誰の所有物なのか確認しておく必要があります。登記簿だけでなく、確定測量図(土地の境界を完全に確定させた測量図)や現地の境界標で確認することをおすすめします。気になる部分があれば不動産会社に確認してもらいましょう。 ・土地の形(図面との差異がないか) 図面は実際の測量情報を元に描かれているとは限りません。あくまで大まかな形や道路との接道部分を把握するものですので、自身でも現地をしっかり確認しましょう。 |
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昼夜平日休日の周辺状況や立地 | ・周辺の雰囲気や騒音 ・近隣住民の様子 ・道の混雑具合(交通量) ・治安が悪くないか ・スーパーやコンビニ、病院や郵便局など生活に重要な施設との距離 ・駅やバス停からの距離 ・電柱やゴミ置き場の位置 ・雨の日の水はけ具合(側溝などで水が溜まりやすい場所がないか) など |
方角 | ・日当たりや風通し 付近に高い建物、雑木林や竹林などがあると風通しが悪くなる可能性があります。 |
物価 | ・スーパーや商店街での商品価格など |
2)事前の条件交渉
売買契約を交わす前に、「買付証明書」で土地購入に関する条件の交渉が可能です。
買付証明書(購入申込書)とは?
売主に対して明確に購入意思を示すもので、その名称は不動産会社によって異なります。売買契約とは違い買主がキャンセルすることができ、費用もかかりません。ここで買主から売主への購入希望条件を提示し、価格や引き渡しのタイミングなどを交渉することができます。
【買付証明書の記載項目】
- 申込日(購入申込書の提出日)
- 買主の情報(住所、氏名、電話番号を記入し、押印)
- 購入希望条件(売買価格、手付金、売買契約日、引渡し希望日、住宅ローンの有無)
- 対象物件(不動産会社が記入する場合、間違いがないか要確認)
申請とキャンセルを安易に繰り返してはいけません。強い購入の意思がある場合にのみご活用ください。また、住宅ローンの記載もありますので、不動産会社に相談しながら事前準備を済ませ、条件は慎重に検討しておきましょう。
【ここでのポイント】
①相場を知ること
不動産情報での価格はあくまで売主の希望価格です。
交渉する際、相場の把握には公示地価と実勢価格を踏まえておきましょう。ただし、同じエリア内であっても土地の条件や制限によって価格に差が出ます。相場はあくまでも目安。相場=売買価格ではありません。
②価格交渉は売主の希望価格からかけ離れ過ぎないように
良い土地はライバルも多いので、値下げ交渉をしている間に他の方に取られてしまう可能性は十分あります。不動産会社にとっても利益が減るのであまり積極的ではない場合も。極端な値下げは現実的ではありませんので、注意しましょう。
家づくりの豆知識 ~土地の価格は4つある~
そもそも土地には定価がなく、その利用目的によって4つの基準価格が存在しています。
土地の相場は、下記それぞれの価格から利用目的に合わせ判断していきましょう。
公示地価
地価公示法に基づいた資産価値を表す価格。
※毎年3月中旬ごろに国土交通省から発表されています。
実勢価格
実際に売主と買主の間で合意に達した売買価格。
※常に変動する価格です。
路線価
相続税や贈与税を出す際の基準となる価格。
固定資産税評価額
その土地にかかる税金を確認するための価格(公示地価の70%)。
下記サイトでそれぞれの価格を確認できます。
公示地価:国土交通省のWEBサイト「土地総合情報システム」
実勢価格:不動産取引価格情報検索サイト
路線価:国税庁のWEBサイト「路線価図・評価倍率表」
5.信頼できるパートナー(住宅建設会社)を見つける
先でも述べましたが、住宅建設会社はより専門的な知識を持って土地選びの相談に乗ってくれます。しかし、担当者が「しっかり説明できない」「対応が不安」という場合は要注意です。
【ここでのポイント】
①窓口となる担当者に建築の知識があるか。
建築士と直接やり取りできればスムーズでしょう。しかし、間に担当者がいる場合、無知な担当者ではスムーズな情報共有ができません。住宅建設会社の選定において、会社のノウハウや技術、アフターフォロー、実績も大事ですが、トラブルにならないためにも、知識があり信頼できる担当者であるかも非常に重要です。
②相談=契約ではない。
契約するには必ず契約書を交わします。契約書を交わす前であれば、他へ依頼することは可能です。「せっかく相談に乗ってくれたから」と感情だけで判断せず、自分にとってより良い選択をしてください。もし、相談に乗ったのだからと契約を強要されるようなことがあれば、その会社は絶対におすすめしません。
住宅建設会社にもさまざまあります。「ハウスメーカー」「工務店」の違いを詳しく説明したこちらの記事も参考にしてみてはいかがでしょう。
【新築注文住宅 】ハウスメーカーと工務店どちらに頼めばいいの?違いや特徴を知って満足出来る家づくりをしよう
まとめ
逃してしまわないためにも「決断のスピード」は重要です。しかし、十分なリサーチをせず焦って決断しては後悔してしまいます。土地の状況を正しく理解して不利な条件がないか確認し、納得した上で購入しましょう。
土地選びで失敗しないためのポイントは、
- 土地に関する条件や制限を知り、自分の家づくりに適した土地か判断する。
- 不動産会社情報だけでなく、現地を必ず自分の目で確認し不安要素を解消する。
- 売主の条件をのむだけでなく、希望条件の交渉をしておく。
- 信頼して相談ができ、知識のある担当者がいる住宅建設会社を探す。
土地購入後には、いよいよ家づくりが本格的にスタートします。良い土地に出会い、信頼できるパートナーとあなただけの素敵なマイホームを実現しましょう。不動産会社の見極めポイントなどをまとめたこちらの記事も参考にどうぞ。
土地探しで疲れていられない!無駄なく「良い土地」を探す方法。