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注文住宅の間取りの決め方【準備編】正しく間取りの要望をまとめるにはどうしたらいい?

公開日 2022.03.19
更新日 2023.06.16
住宅建築

注文住宅の最大の魅力は何と言っても間取りを自分たちの思い通りに作れること。
では設計士にどのように間取りプランの作成を依頼すれば良いのでしょうか。
この記事では、間取りの要望のまとめ方を解説していきます。

この記事を読んでわかること

  • 間取りづくりの情報収集の方法が分かる
  • 設計士に依頼するときの要望書のまとめ方が分かる
  • 様々な住宅の事例を写真で見ることができる

目次

1.要注意!自作の間取り図を渡して失敗する人多数

理想的な家づくりにおいて、施主ご自身で間取りを作って設計士に渡して依頼することはおすすめしません。自作の間取り図を渡すことで、かえって間取りづくりがうまく進まなかったり出来上がってから後悔する人も多いようです。

理由としては以下の内容が挙げられます。

  • 設計士にとって施主が考えた間取りの指示通りに作ることが目的になってしまい、設計士の経験や知識に基づくアイデアやリスク回避が盛り込みづらくなる
  • 結果として高額な費用になったり使いづらい間取りになってしまった場合の責任は施主になる場合がある
  • 実際には配管や構造柱などが必要になり、現実的でない間取りを作ってしまう場合がある。
  • 1階、2階の平面的な計画しかできず、スキップフロアやロフトなどの立体的な計画ができない

など、挙げたらきりがありません。
優秀な設計士は、土地の条件を鑑みながら、施主の要件を間取りに反映してくれます。
施主はいかに設計士に自分たちの要件を漏れなく正確に伝えられるかが、理想の間取りづくりの鍵になるといえます。

2.設計士に渡す間取りの要件のまとめ方

間取りの要望を住宅建設会社に伝えるためのステップは

  1. 【情報収集】イメージを膨らませたり知識をためる
  2. 【計画】生活を棚卸しながら計画をする
  3. 【要望】自分たちの生活コンセプトを作り上げる

この3ステップです。
このステップをどのように進めていくのかを解説していきます。

3.【ステップ1】情報収集:
注文住宅を建てた人の経験談も収集しよう

既にWebサイトやSNSで間取り関連の情報収集をされている方も多いと思いますが、実際に注文住宅を建てた人の経験談も収集することをおすすめします。
注文住宅を建てた人の経験談には、家のコンセプト作りのヒントが沢山あります。
間取り図の情報を沢山見たい方や、間取りを立体的に検証できるツールについて詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
間取り図に特化した情報収集方法や間取りシミュレーションツールをご紹介した記事はこちら

1)リアルな声が聞ける「完成内覧会」に行こう

「完成内覧会」とは、その会社で建てたお施主さんの家を引っ越しまでの期間お借りし、見学できるものです。
施主がどんなコンセプトでその家を建てたのか、家づくりストーリーを直接聞くことができます
家族で意見が対立したときの解決方法が聞けることも。
工務店は広告をあまり出さないので意外と知られていませんが、ホームページやインスタグラムで告知されていることがあります。
「完成内覧会」「完成見学会」「内見会」など呼び名は様々です。



ママが笑顔になれる家

住宅のコンセプト:シューズクロークから直接パントリー、キッチンへ……など、忙しいママたちの要望を取り入れた家事動線。時短家事が叶う回遊動線の間取り。

画像引用元:株式会社建装(山形県)



完成見学会

住宅のコンセプト:
開放感あふれる広々とした間取り/ゆったりとした22帖のLDK/つながる家事動線で効率アップ/LDKから出入りできるウッドデッキ/リビング脇のマルチに使える和室/程よくこもり感のある書斎/6帖のインナーバルコニー

画像引用元:アサヒアレックス東日本株式会社(宮城県)

内覧会は全ての工務店が開催している訳ではありません。施主が気持ちよく場所を画像引用元してくれるということは、施主との関係が良好で品質も高い優良工務店、と捉えることも出来ます。工務店選定時の大きな判断要因にもなりますね。

2)後悔の事例にはヒントが沢山

WebやSNSから見てとれる経験談情報の中には「こんな素敵な家で良かった!」という満足の声の他に「こんなところが失敗した」という後悔の声もあります。

中でも後悔の事例は、その理由が具体的に書かれていて、これから家を建てる人にとって有益な情報が載っていることが多いので、家づくり時に気を付けなければいけない事が沢山載っています。

後悔の声が多く載っているメディアには、ブログ記事、YouTube、Twitter、Instagramなどがあります。

検索ワードとしては「家づくり 後悔」「注文住宅 後悔」「間取り 後悔」などが挙げられます。

ママスタセレクト

一部引用:ママスタセレクト

4.【ステップ2】物量の確認と計画:
持ち物の量やライフスタイルの確認とモノ・コトの計画

情報収集をして知識をためたら、それを活かしながら5つの視点で要件をまとめていきます。
家具や収納物だけでなく、自分たちのライフスタイルも棚卸しながら、必要なモノとコトを計画していきます。

1) 住む人の将来も考えた個室計画

木造住宅の場合、耐久年数は30年といわれています。現在の人数だけでなく、将来人数が増減することを想定される場合はフレキシブルな個室計画をたてていきます。

2) 4つの動線計画

必要な個室要件が決まったら、住む人が一日どのように過ごすのか、大きく4タイプの動線について考えていきます。

工夫一つで家事の負担が劇的に減る「家事動線」

主にキッチン、洗濯、洗濯物を干す場所の3つがまとまっていると移動が少なく劇的に家事の効率が良くなります。
家事をする人が複数いる場合は、出入り口が2つある廊下型や回遊動線という方法もあります。ただし家事周りがオープンすぎると雑音がどこにいても聞こえてくる問題も。
また、食料品のまとめ買いをする人は、玄関からの距離が短いと運ぶ負担が少なく便利です。

要望の出し方:家事をする人の人数/家事スペースをどの程度オープンにしたいか/家事が立て込む時間帯/まとめ買いをするかどうか 等

やまぜんホームズ

キッチン~パントリー~洗面室~脱衣室兼ランドリールーム~浴室を一直線に並べた動線

画像引用元:株式会社やまぜんホームズ(三重県)

朝が大混雑しないような「通勤動線」

住人の数が多い場合、洗面所やトイレへの行き来で大混雑することも。
廊下は広めにとる、洗面所やトイレの数を増やすなどの工夫も必要です。
現在どんなことで困っているのかを考えると具体的に計画ができるようになります。

建設コストにも影響する「水回り動線」

お風呂、洗面所、お手洗いがまとまっていると水回り配管のコストが下がるメリットもありますが、思春期のお子さんがいるご家庭では、脱衣所と洗面所が同じ場所にあると困ってしまうのでお子様の成長を考えた配慮が必要です。

要望の出し方:洗面所と脱衣所が分かれていたほうが良い/コンパクトにまとめたい 等

来客があってもストレスない環境を作る「来客動線」

来客が多いご家庭は、プライバシーエリアと来客エリアを分けることも考えましょう。 来客が親族など家族に近い関係に限られる場合など、特段配慮が要らなければ来客動線自体の検討も必要なくなり、スペース配分も要らなくなります。

要望の出し方:来客がある/来客者はどんな人か(親しい人かビジネスよりか等)/宿泊を伴う来客がある/来客がいてもお風呂に入れるようにしたい 等

3)見えない「音」「風」「光」も忘れずに

間取りづくりで見落としがちなのが、図面では見えない「音」「風」「光」のこと。
建てる場所の条件でも大きく影響してきますので、想像しながら計画していきます。

失敗するととにかく不快になる音の問題」

建てる場所の音環境は事前に確認します。大通りや繁華街に近いなどで深夜の騒音が聞こえてくる場合は、寝室の場所はできる限り接道から離れた静かな場所にします。
間取り面では、例えば夫婦共にテレワークの場合、お互いの声が聞こえないように少し離れていたり、緩衝になる居室があるとお互い静かでストレスにならないことも。
二階に浴室を置く場合、階下の部屋には音が響くことも忘れずに。



外観
中庭

陽の光が差し込む明るい中庭はプライバシー性が高く、家の中でもアウトドアやDIYが楽しめます。
画像引用元:株式会社ニューライフ総建すまい工房(山梨県)

生活がより豊かに感じられる「風通しが良い家」

風通しは最終的には窓の大きさや配置で決まりますが、あまり家の中を細かく分断しないような間取りにすると、家の中を風が通り抜けて気持ちよく過ごせます。

土地の特性や隣接環境を考えて。西日問題も想定を「光とうまく付き合う」

その土地の日当たりの良い場所、悪い場所を把握した配置計画が望ましいです。
隣と密接して日当たりが悪い土地の場合には、採光が欲しい居室の優先順位をつけていきます。
西日問題も住み心地に大きな影響を与えます。西日のあたる場所が午後に使う部屋だと夏は暑くて冷房代もかさみますし、食品庫は温度があがり衛生上不向きです。一般的には西側は窓のない居室が望ましいといわれています。
反対に東側に窓のある寝室は朝日があたり気持ちよく朝を迎えられます。

要望の出し方:寝室は接道から離れた場所にしたい/夫婦で在宅ワークなので、お互いの声が聞こえないようにしたい/ピアノの音を家族に迷惑かけずに出したい/風通しを良くしたい居室はどこか/光が入りにくい土地なので採光に配慮してほしい 等

4)新築時の美しい姿をキープしたいなら絶対必要な収納計画

せっかく新築を建てても、収納場所が足りなくて居室内にモノが溢れたら悲劇です。 今どのくらいの量があるのか、将来どのくらい増えるのかを把握して設計士に伝えることが重要です。
引っ越しを機に断捨離をすることもおすすめします。

①衣類

収納目安:成人一人あたり幅1.8m程度、子供一人あたり幅0.9m程度のクローゼットが必要
要望の出し方:幅がどのくらい必要か、着物箪笥など特別収納があるか 等

②寝具・布団

収納目安:布団の場合は約0.9m幅の押入れが必要
要望の出し方:ベッドか布団か、毛布など季節寝具をどう収納したいか 等

寝具に収納スペースを取られたくない方は、収納つきベッドの使用も検討しましょう。

③靴
靴の保有数は、男性平均4~5足、女性平均8~9足
  男女2人ずつの4人暮らしの場合は約30足という計算になります。
(靴に関するアンケート調査・ランキング(CUSTOM FASHION MAGAZINE調べ)

要望の出し方:大まかな靴の量、ブーツ・長靴など大型の靴があるか 等



玄関
くつ入れ

玄関の大容量で使い勝手も良いシューズクローク 趣味のサーフィン用具を収納できる作り
画像引用元:伸和建設株式会社(滋賀県)

④台所の大型家電と食器

要望の出し方:冷蔵庫の台数、ワインセラー・ウォーターサーバーなどの大型家電の種類と台数
食器を大量に所有している場合は現状の収納状況を見せて参考にしてもらう 

⑤掃除用具や日用品のストック場所

収納目安:布団の場合は約0.9m幅の押入れが必要
要望の出し方:掃除機の台数と種類(スタンド、ルンバなどの自動型など)
日用品のストック量、どこと近いところに置きたいか(洗面所近く、各階に1台ずつなど)

⑥大型の家電や荷物

要望の出し方:大型加湿器や空気清浄機、ゴルフバックやスキー用品、スーツケースなどの台数と出し入れをしたい場所(玄関、寝室など)

5)家具リストは実測して行う

引っ越し先に持っていく家具のリストを居室ごとに作ります。
居室に柱などで出っ張りが出る場合もあるので、必ずサイズは実測しましょう。
新たに購入する予定の場合は、サイズは分からなくても、例えば「3人掛けソファを置きたい」という要望をまとめておきます。

5.【ステップ3】コンセプト作り:
自分たちの「理想の未来絵図」を描く

家づくりコンセプトを作る

様々な情報を得て、自分たちの住まいに必要なものが整理されてきました。 最後に行いたいのが「住まいのコンセプト作り」です。 どんなお家に住みたいか、どんなライフスタイルを望むか、言葉でまとめていきます。

例)

  • 完全個室の無い、家族コミュニケーションが中心の家
  • 家族コミュニケーションも一人の静かな時間も尊重した家
  • 来客時も家族もそれぞれ快適に過ごせる家
  • アウトドアリビングが中心のライフスタイル
  • 風と光をいつも感じられる家
  • 子供が近い将来独立することを考えたフレキシブル性の高い家
  • 将来親と同居することを想定した家

コンセプトのある家の事例

アリアンス

コンセプト:階段の途中にある中2階のスキップフロア。お子様が勉強したりご主人様や奥様の趣味のスペースとしてもご活用いただけます。
実はこのスペースも児童心理学に基づいた設計なのです。
画像引用元:アリアンス株式会社(静岡県)



眺める庭
眺める庭

コンセプト:庭と暮らす家
玄関とホールやリビングに面した「眺める庭」
画像引用元:株式会社作造(石川県)

三洋ハウス

コンセプト:家でゆっくり過ごす大切な時間

画像引用元:画像引用元:三洋ハウス株式会社(鹿児島県)

まとめ

家づくりの情報収集時は、インターネットで見られる一般情報の他に、是非リアルな声や後悔の事例も見るようにしましょう。
設計士に渡す要望書は、居室の数は勿論ですが、収納量やライフスタイル、住宅コンセプトも盛り込むことでより施主の理想の家が反映されやすくなります。
逆に施主自身で間取りを作ることは全くおすすめしません。
間取り設計のための要望をまとめる作業は、住む人の意思や夢を確認しあう、コミュニケーションの機会ともいえます。
ご自身の世界に一つの「家づくりストーリー」を是非素晴らしいものに作り上げてください。

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