暖房設備として大人気の床暖房。
一方で、Web上では「床暖房は電気代が高いからダメ」という否定記事も多く存在します。
床暖房は本当に良い暖房設備なのか分からなくなっている方も多いのではないでしょうか。
- 床暖房は本当に人気なのか?
- 床暖房の電気代は本当に高いのか?
目次
1.床暖房の人気の実態は如何に?
床暖房は一体どのくらい普及していて、どのような評価を得ているのでしょうか。
床暖房は新築一戸建ての「使える設備ランキング」で8位を獲得
国内最大の不動産サイト「SUUMO」の【「使える」設備ランキング】では、新築一戸建てにおいて、太陽光発電、屋根裏収納、ビルトイン食器洗浄乾燥機、カメラ付きインターホン、などの超人気設備に続いて、床暖房は8位を獲得しています。
床暖房は足もとからじんわり暖まり乾燥しにくいのが利点、という理由から、支持率59.3%の「使える」設備として大活躍しています
・ひんやり玄関にも設置
リビングだけでなく、玄関の床も床暖房にしたので、靴が温かい。寒い地方には必需品ですね。
(一戸建て購入者 女性 30歳)
・乾燥しにくいので身体にいい
足元からほんわり暖かく、湿度も一定に保てるので、喉にやさしく、風邪をひきにくいのも利点です。
(一戸建て購入者 女性 35歳)
・私にも地球にもやさしい
冬場に温かな床にゴロゴロ寝転がれるのは心地いい。省エネだし、二酸化炭素を排出しないところもエコだと思う。
(一戸建て購入者 男性 50歳)
近年の新築マンションでの床暖房普及率は8割以上
新築マンションでの床暖房普及率は、2020年に8割を超えました。
画像引用元:床暖房に食洗機…マンションの部屋設備は時代でどう変わった? |マンショントレンド分析
※出典記事の引用元は株式会社東京カンテイ機関誌「Kantej eye」(Summer 2021)
ここ近年で床暖房つきのマンションの売れゆきが良く、普及が進みました。
現在はもはやマンションにおける床暖房はデファクトスタンダードと言えるでしょう。
マンションから引越して新築住宅を建てる際には、床暖房は標準装備として希望するのは自然なことです。
政府調査によると、持ち家+子育て世代は高い普及率
日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイト「e-Stat」によると、平成26年時点の床暖房普及率はこのようになっています。
- 全体での床暖房の普及率は11.6%
- 持家での普及率は約13.6%
- 持家かつ30~39歳の世帯での普及率は22.4%
- 持家かつ30~39歳で高収入世帯での普及率は52.4%
Web上での検索も活発!「床暖房」の検索件数は月間14,800件
「床暖房」というキーワードをWeb検索する数は月間14,800件にのぼります。
※2022年2月時点の直近半年における月間検索数
この数値はGoogleやYahoo!などの検索エンジンで検索される回数を指します。
10,000以上あるキーワードはWeb業界では「ビッグキーワード」と呼ばれており、「床暖房」は住宅設備において絶大な人気のお化けキーワードと言っても過言ではありません。
一方で、令和3年度の持家系の新設住宅着工戸数は、500,000戸です。
※国土交通省の令和3年度 住宅経済関連データより
床暖房で検索するボリュームは年間に換算すると177,600件。
すべての検索ニーズが新築用に床暖房を探しているわけではないとしても、14,800件というのは非常に大きな数字であるといえます。
床暖房関連の広告や記事の数はなんと2,000万超
「床暖房」で検索すると、Google検索では約 21,200,000件、Yahoo検索では約20,700,000件もの検索結果が表示されます。それだけ多くの広告や記事のURLが存在するということです。
この記事をお読みいただいている間にも、新しい記事が公開されていることでしょう。
参考までに、他の人気住宅設備の状況を以下にまとめました。
月間検索ボリューム | Google検索結果 | Yahoo検索結果 | |
---|---|---|---|
床暖房 | 14,800 | 約21,200,000件 | 約20,700,000件 |
太陽光パネル | 18,100 | 約 20,500,000件 | 約12,700,000件 |
浴室乾燥機 | 27,100 | 約 12,000,000件 | 約14,500,000件 |
屋根裏収納 | 1,900 | 約2,400,000件 | 約2,400,000件 |
多くのメーカー、住宅建設会社やブロガーが狙うキーワードになっており、まさに「しのぎを削る」床暖房戦国時代といえるでしょう。
「床暖房」がどのくらい需要も供給も活発な設備なのか、イメージがつきましたでしょうか。
2.床暖房の進化の歴史と床暖房否定記事を書く人々の思惑
床暖房は良い、という記事が多くあります。
そして、床暖房は絶対ダメ、という記事も多くあります。
さて真実はどこにあるのでしょうか。
それは、床暖房の歴史や各企業の立場による思惑を理解することで見えてきます。
床暖房の進化の歴史
~床暖房の誕生と発展~
1960年代 寒冷地の道路の路面凍結を防ぐためのロードヒーティングが床暖房のはじまり。
1970年代 電気式床暖房が住宅市場に参入する。
温水式床暖房が後発で住宅市場に参入する。
1980年代 床暖房対応のフローリング床材が開発され、大きなマーケットとして成長。
1980年代に販売された床暖房は、電気代が非常に高い高級暖房器具でした。 築年数が20年以上経過した戸建て住宅では床暖房の使用率が高くない、というデータが存在しますが、大きな理由はここにあると考えられます。
現在は、快適さや熱効率の良さの面から温水式床暖房が主流となりました。
また、冷暖房にヒートポンプ方式を採用することで省エネが進み、更に床暖房にリフォーム対応の商品が開発されるなど、更に取り入れやすい暖房設備となりました。
床暖房の否定記事が多い理由
床暖房の否定的な記事が多い理由には、主に以下が考えられます。
床暖房と相反する商材=天然無垢材の床材を扱う会社の思惑
天然無垢材はその風合いや足触りの良さから人気が高く、冬でも多少冷たさが緩和されるという良質な素材です。
ただし、天然無垢材と床暖房の両立はできません。
床暖房は床材を暖めて部屋を暖房するため、暖めることで反りが出てしまうのです。
床暖房と天然無垢材の床材との相性が悪いせいか、一部の天然無垢材を取り扱う会社による床暖房を否定する記事が存在します。
※すべての天然無垢材を扱う会社が床暖房の否定記事を発信している訳ではありません。
最近は床暖房対応の天然無垢材も開発されてきていますが、ご希望の床材が床暖房対応ではなかった場合は、きっぱりと床暖房は諦めて、他の暖房計画をしていきましょう。
記事へのアクセスを狙って大胆に否定的なタイトルをつけるブロガーや企業
「床暖房は身体に悪い」「床暖房で後悔した」といったタイトルの記事を目にすると、気になって記事を読むと、実際にはそれほど床暖房を否定していない、ということがあります。 広告収入で稼ぐブロガー記事や、高気密高断熱を売りにした住宅建設会社が自社製品の紹介をしている記事、更には電力系の販売店による電気プランを紹介した記事もあります。 床暖房という人気のキーワードにのっかる形で、記事を見てもらうことを目的として書かれていることがあります
3.床暖房の電気代は高いのか?電気代データ比較の着地点は?
最後に、よく検索される「床暖房 電気代」というキーワードについて考えていきます。
「床暖房の電気代は高いのではないか?」という漠然とした不安から、調べる方が多いようです。
これは、実は日本人が電気代の計算式や、電力の小売全面自由化の後に複雑化した電気プランついて詳しい知識がないことに起因していますが、
それを逆手にとって、床暖房の電気代を独自で試算したデータを用いて「こんなに高い」と紹介されている記事も多く存在しています。
先に床暖房の歴史について述べた通り、確かにかつては電気代が非常に高い高級設備でしたが、現在は省エネ化も進んでいます。
温水式床暖房の電気代について詳しく知りたい人はこちらをお読みください。
温水式床暖房の電気代は?エアコンとの比較や種類まとめ
ところで、この電気代論争はそもそも本当に重要なのでしょうか。
暖房と電気代の関係において、
- 暖かさが効率よく得られる仕組みであれば、省力の暖房で済む
- 暖かい空気がキープできる住居であれば、暖房代は抑えられる
このような観点で考えてみてはいかがでしょうか。
暖房は、器具の温度設定よりも「人が冷えを感じないか」が重要
電気代を比較する際に、「外気〇℃」「暖房設定温度〇℃」という条件設定の上で計算されていることがあります。
先ず、ここについて疑問を投げかけていきます。
暖房の目的は、人が「冷え」と感じる場所を暖めることです。
下表より、人が冷えやすいところは床に接する足先であり、下半身が中心であることがわかります。
画像引用元:株式会社薬事法ドットコム 「冷え性に関する調査」
「あなたが冷えやすいと感じる身体の部位を教えてください。」の問いに対する回答
エアコンと床暖房には対照的な特徴があります。
- エアコンは身体の上部が暖まりやすい
- 床暖房は身体の下部が暖まりやすい
人が冷えを感じるのが下半身であれば、下半身をどのくらい快適に暖められるか、ということに焦点をあてるべきです。
外気と室温だけで電気代の計算をするのは実態に即していないと言えますね。
忘れてはいけない、暖かい空気を外に逃がさない環境づくり
今度は温まった空気をどのようにキープしていくかに焦点を当てていきます。実はこれこそが最も重要です。
壁や窓を通して暖かい熱は外に逃げていきます。これを防ぐのが「断熱」です。
断熱性能の高い家は、温かい空気を部屋から逃がしません。暖かさをキープします。
暖かさがキープされれば、これ以上空気を暖めなくて済むため、暖房効率はよくなります。
断熱性能の低い家は、常に温かい空気が部屋から外に逃げていくため、強く暖房をし続けることになり、暖房効率が悪くなります。当然電気代も高額になります。
さらに、住宅に配備することが法律で定められている換気設備も、熱交換率の高い換気システムを採用することで、更に暖房効率が高くなります。
熱交換効率95%の換気システムAVH-95 サベスト(第1種 全熱交換型セントラル換気システム床暖房の電気代が高いかどうか、という議論は、実は床暖房の電力量ではなく住宅の性能に答えがあるのです。
4.床暖房の弱点は?
床暖房自体は非常に優秀な設備であることをここまで書いてきました。
ただし、全く弱点がないわけではありません。
一般的にネット記事で書かれているデメリットをまとめた記事はこちらです。
本記事でお伝えしておきたい床暖房の弱点は以下の2点です。
1)全居室に入れるとさすがに高額になる
住宅建設会社にもよりますが、10畳程度のリビングに床暖房を入れると、設備と施工費で数十万円かかる、というのが一般的な試算のようです。
全居住空間に設置するのはさすがに高額になることが予想されます。
2)冷房設備がない
床暖房なので冷房設備はありません。
冷暖房計画時には、エアコンの併用が必須です。
この弱点を克服するための、全居住空間を床下から冷暖房できる設備も開発されています。
まとめ
床暖房の普及率や使用率からも、床暖房は現代の暖房設備において素晴らしい設備であることがわかります。
ただし、天然無垢材の床材を使用したい方や、全館に冷暖房設備を入れたい方には不向きの設備です。
そして、どんな素材や設備を採用するにせよ、快適な暮らし、エコな暮らしを実現するには、暖められた熱を外に逃がさない高気密・高断熱住宅を建設することが重要です。
ご自身の住宅には何を大事にしたいのか、ネット上のさまざまな記事に惑わされることなく、ご自身で最適なものを納得して選ばれることを願っています。
多くの人にとって住宅は一生モノです。
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