新築を検討中の方の中には3階建て住宅を検討される方もいらっしゃると思います。3階建て住宅は、2階建てに比べてどのくらい価格が高くなるのでしょうか?
今回は、3階建て住宅のメリット・デメリットや注意点、坪単価の相場や費用を抑えるポイントについてご紹介します。3階建て住宅の間取りや施工事例も合わせてご紹介しますので家づくりの参考にしてみてください。
目次
1.3階建て住宅のメリット・デメリット
3階建て住宅のメリット
- 狭い土地でも建てられる
- 3階建てならではの間取りが可能
- プライベートな空間を確保しやすい
- 地価が高いエリアでも一戸建てで住める可能性がある
3階建て住宅の大きなメリットは、15〜20坪程度の狭小地であっても間取りの工夫次第で十分な居住スペースを確保できる点です。また、3階建て住宅は高さがある分、階段下を利用した趣味スペースや壁面収納、1階部分をガレージにするなど3階建てならではの工夫した間取りが出来ます。更に、2階にリビングを、別階に個室を配置することでプライベートな空間を確保しやすいというメリットがあります。
また、狭小地はその地域の土地相場よりも安く売られていることが多く、地価が高いエリアでも安く一戸建てが建てられる可能性があり、敷地面積に比例して算出される固定資産税や都市計画税などの税金や登記費用も抑えることができます。
3階建て住宅のデメリット
- 階段の上り下りが大変
- フロアごとに冷暖房設備が必要
- 3階が暑くなりやすい
- Wi-Fiの電波が届きにくい
3階建ての住宅では階段が多くなり家事動線も複数階にわたるため、重い荷物を運んだり掃除や洗濯で頻繁に階段を上り下りする必要があり、肉体的に負担がかかるといわれています。特に、高齢者や小さなお子様がいるご家庭では階段をゆるやかにするなどの工夫が必要です。
また、冷暖房設備は3フロア分の設備と費用がかかります。特に夏場は、3階には上昇した暖かい空気が溜まり、かつ屋根から日射を直接受けるため、熱い空気がこもりがちです。暑さを解消するには屋根の断熱性を高めたり、熱を逃がすために壁や屋根裏の内部の換気も必要です。
また、Wi-Fiのルーターは別階には電波が届きにくいため、各階に中継器を設置するなどの計画が必要になります。
2.3階建て住宅を建てる際の注意点
1)日当たり(採光)を考慮した設計が必要
3階建て住宅の場合、住宅密集地では隣家との距離が近く、採光が取りにくいことやプライバシーの観点から窓が開けられず、採光を確保できないケースがあります。
採光を確保するには、日中過ごすことが少ない寝室を1階にしたり、駐車場を1階部分に設置するビルトインガレージを採用するなどし、日中過ごす時間が多いリビングを2階に配置することで明るさを確保すると良いでしょう。また、2階〜3階を吹抜けにすることで採光を確保できるケースもあります。
3階建て住宅を建てる際は、周辺環境を確認し、日照条件を考慮して採光を確保できるよう間取りの工夫が必要です。
2)3階に非常用入口が必要
建築基準法では、3階以上の建物に火災の消火や救出活動の際、外部から容易に進入できるよう非常用入口の設置が義務付けられています。2階建て住宅にはない、3階建て住宅ならではの設備となりますので留意しておきましょう。
3)【要注意】土地の制約条件によっては3階建てが建てられないことも
住居エリアによって「用途地域※1」の条件が異なり、3階建てが建てられない地域があります。また、北側隣地の建物の日照を確保するための「高さ制限※2」や、建物の北に面する部分を斜めに削った設計をとる「斜線制限※3」、建物の大きさを一定の割合に制限する「建ぺい率※4」など、3階建て住宅にはさまざまな制限があります。3階建て住宅を建てる際は、これらの制限や条件を把握し、土地選びから慎重に検討する必要があります。
土地の制約条件について詳しく知りたい方は、
その土地大丈夫?決める前に後悔しない土地選びの見極めポイントをご覧ください。
※1)「用途地域」…都市計画法によって建築できる建物が決められているエリアのことを言います。「用途地域」ごとに“建築できる建物”と“建築できない建物”が明確になっており、地域によっては3階建て住宅を建てられない場合もあります。
※2)「高さ制限」…前面道路、周囲の通風や日当たりを遮らないため、都市計画法や各自治体が定める条例などによって規制される建物の高さ制限です。一般的な住宅街では建物の高さは10mまたは12m以内となっています。
※3)「斜線制限」…隣人の日照や採光、通風等、良好な環境を保つため建築物の高さを規制するルールです。
※4)「建ぺい率」…土地の中で家を建てられる面積の割合のこと。 例えば、土地が100㎡で建ぺい率50%の際は建物が建てられる面積は50㎡となります。
3.3階建て住宅の価格相場
ローコスト住宅の3階建て坪単価の目安は約45万円〜60万円、大手ハウスメーカーの場合は約70万〜90万円、地価が高いエリアやハイグレード住宅では坪単価100万円以上になるといわれていますが、そもそも住宅の建築価格は、住宅グレードのほか住宅設備によって大きく異なります。そのため、本記事では2階建て住宅と比較した3階建て住宅の価格相場をご紹介いたします。
2階建て住宅との費用比較
2階建て住宅と同じ平米数、住宅グレードで3階建て住宅を建てる場合、建築費は1.2~1.5倍、坪単価は5〜10万円ほど高くなるといわれています。
【延床面積100㎡を確保する場合の費用例】
2階建ての場合 | 2,000万円 | 3階建ての場合 | 2,400〜3,000万円 |
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3階建て住宅が割高になる理由は、工事するフロアが2階建て住宅に比べ1階分増えるため、工事費用や足場などの仮設費用がかさむほか、耐震性の高い建材や構造が必要になるためです。
屋根裏まで有効活用する3階建て住宅の建築費は2階建て住宅の1.2倍程度、3階を屋根裏ではなく他のフロア同様に建てる場合の建築費は1.5倍程度が目安となっています。
4.3階建て住宅で発生する追加費用
3階建て住宅は、2階建て住宅にはない「構造計算費」や、2階建てよりも発生する場合が多い「地盤改良費」などの追加費用も念頭におく必要があります。
- 「構造計算費」
建物の安全性を検討・確認するための構造計算にかかる費用です。3階建て住宅を建てる場合は構造計算書の提出が義務づけられており、専門の設計士に依頼します。建物の規模や算出方法などによっても異なりますが、一般的な木造3階建て住宅の「構造計算費」は約20万円、同じ規模のコンクリート造では、約28万円が相場となっています。 - 「地盤改良費」
基礎下の地盤を固く補強するための工事にかかる費用です。地盤調査の結果、3階建て住宅を建てるために地盤改良が必要となった場合は「地盤改良費」が発生します。「地盤改良費」は、地盤の状態により異なるため設計後の地盤調査を行った後でないと正確にはわかりませんが、約30〜180万円が相場となっています。 3階建の住宅は、2階建て住宅に比べ建物自体の重量が重くなるため、「地盤改良費」が発生する場合が多いです。
5.3階建て住宅の建築費を抑えるポイント
3階建て住宅は、2階建てに比べ割高になるうえ、2階建て住宅にはない追加費用が発生しますが、建築費を抑えるにはどうしたら良いのでしょうか。いくつかポイントをご紹介します。
1)家の形や屋根の形など外観をシンプルにする
屋根や壁などが複雑な構造や形状の場合、柱や壁の面積が増えるのに伴い、その分に必要な下地材や仕上げ材も増えてしまい建築費がかさみます。また、傾斜のある屋根は足場を組む必要があるため、その分費用が発生します。建築費を抑えるには、凹凸の少ないシンプルな外観にすると良いでしょう。
画像引用元:創建ホーム株式会社
2)リビングイン階段にする
画像引用元:株式会社ハウスジャパン
リビングイン階段とは、リビングの中に階段を設置する間取りのことを言い、リビング階段とも呼ばれています。そもそも3階住宅の場合、経路を間違えることなく地上(避難階)まで直通する階段、「直通階段」を設けることが建築基準法で定められており、また「直通階段」に扉を設けることができません。リビングイン階段はリビングが広く見えるだけでなく廊下の面積を減らすことができるため、建築費を抑えることが可能です。
3)ダイニングキッチンにする
ダイニングとキッチンを繋げてダイニングキッチンにすることで、個室を作らない分コストが削減でき、オープンスペースな広い空間も確保できます。また、生活動線もコンパクトになります。
画像引用元:創建ホーム株式会社
4)浴室・洗面台・トイレを一箇所にまとめる
浴室・洗面台・トイレなどの水まわりを一箇所にまとめると、排水管の長さを短くすることができ、材料費や施工費を抑えることが可能です。また、複数階にトイレがある場合も、上下階の同じ位置に配置することで排水管の長さを短くできるため、コストダウンが期待できます。
5)ビルトインガレージはなるべく設置しない
家の1階部分に車庫を取り込んだものをビルトインガレージと言います。ビルトインガレージは、2階にリビングを配置し採光の確保を優先したい場合に最適ですが、ビルトインガレージを設置するには1階部分の耐震性を上げる必要があるため、建築費が割高になってしまう可能性があります。敷地内に駐車スペースが確保できる際や採光の確保ができる場合は、そちらのほうをおすすめします。
6)2階ロフト付き住宅やスキップフロアを検討する
コンパクトな土地にスペースを確保するための3階建てなのに、思った以上に費用がかかることでは本末転倒になりかねません。
確保したいスペースが収納やオープンスペースなのであれば、ロフトやスキップフロアを取り入れることで、2階建てでもスペース確保が可能です。
2階+天井高が1400mm未満のロフトを取り入れた場合、3階扱いにはならないので構造計算は不要で延べ床面積にも含まれず、固定資産税の課税対象面積にもなりません。
ただし、ロフトを居室として使用することは建築基準法違反となりますので、あくまでも物置や収納として使用しましょう。
スキップフロアは中2階のことで、踊り場を広くしたようなものです。
広いスペースは確保できませんが、子どもの勉強スペースや趣味スペースとして有効活用できます。踊り場に作る性質上オープンスペースになり、吹き抜け構造になるので、リビングが広く感じられるだけでなく全体を見渡す場所としても機能を発揮します。
画像引用元:納得住宅株式会社
画像引用元:正栄産業株式会社
まとめ
今回は、3階建て住宅のメリット・デメリットや注意点、坪単価の相場や費用を抑えるポイントをご紹介しました。
3階建て住宅の坪単価の目安は住宅のグレードや構造、地域によって異なりますが以下が目安となっています。
- ローコスト住宅の場合約45万円〜60万円
- 大手ハウスメーカーの場合は約70万〜90万円
- 地価が高いエリアやハイグレード住宅では坪単価100万円以上の場合も
3階建て住宅は2階建てに比べ建築費が1.2〜1.5倍、坪単価は5〜10万円ほど高くなるといわれており、さらに、2階建て住宅にはない「構造計算費」や、2階建てよりも発生する場合が多い「地盤改良費」などの追加費用も念頭におく必要があります。
また、3階建て住宅を建てるには「用途地域」や「高さ制限」などさまざまな土地の制約条件をクリアする必要があります。3階建てを建てる際は、「希望する地域で3階建てが建てられるか?」を確認し、「希望する費用内で制限をクリアする3階建てが建てられるか?」を十分に検討するようにしましょう。